1.子ども・子育てに関する政策について (1)災害時における乳幼児の栄養について (2)すみだファミリー・サポート・センターへの登録について (3)各種届出時の窓口における取組みについて 2.学校図書館の蔵書数及び内容の充実について 3.内部公益通報制度について |
私は、3点にわたり、山本区長及び加藤教育長に質問します。
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第一に、子ども・子育てに関する政策について伺います。この間、同世代の保護者の皆様から相談を受けたり、自ら学んできたことを、子育て当事者の視点で取り上げてみたいと思います。
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まず、災害時の乳幼児の栄養について伺います。公益社団法人日本栄養士会災害支援チームが発行する「災害時に乳幼児を守るための栄養ハンドブック」によれば、「災害時こそまずは母乳」という標語の下、まずは母乳の摂取を優先すべきことを明記しています。その理由は、母乳には、粉ミルクに含まれない免疫成分が含まれていることをはじめとして、調乳や保管の手間がいらず、衛生的で経済的で、何より赤ちゃんとのスキンシップをとることができる、という点です。このためには、まず母体の栄養確保と身体の休養が必要です。アレルギー対応食の充実や授乳室用に使えるテント等の設備の配置はもちろん、避難所における避難者の理解が重要です。災害時の母体の栄養確保と休息の体制づくりについて、現時点での取組みと区長の見解を求めます。
母乳育児ができない場合、必要となってくるのが、粉ミルクによる授乳です。平成31年第一回定例会では、はねだ議員及び堀議員から液体ミルクの備蓄について質疑がありました。この時の答弁では、液体ミルクは、断水時には非常に有効なものであるとの認識はある一方で、保存年限や価格面がネックになるため、自助という部分を視野に、普及啓発を考えていく、との答弁でありました。
液体ミルクの配備を仮に自助と位置づけたとしても、災害時に備蓄していなかった、また避難所に持ってくることができなかった、という人もいようかと思います。この場合、現状では備蓄品である粉ミルクで調乳することとなります。
しかし断水時の対応や、ただでさえ疲弊している災害時に、保護者のお湯を沸かす手間や精神的・肉体的負担を考えると、やはり災害時の対応のためには、一定程度の液体ミルクの公的備蓄も必要だと考えます。そこで、その後の液体ミルクの配備についての区としての考えや、普及啓発の具体的な方法論について伺います。
更に、いかに液体ミルクや粉ミルクが充足しても、授乳の際、哺乳瓶の衛生状態が保たれなければ、赤ちゃんにとって下痢や感染症のリスクが激的に上がることが、諸外国での研究結果から明らかとなっています。
こうした現状を踏まえて、文京区は今年度から、液体ミルクをローリングストック方式で備蓄する方針ですが、その際、使い捨て哺乳瓶の備蓄も併せて予定しています。本区において、哺乳瓶の衛生状態を確保する方策について、現時点での考え方を伺います。仮に、使い捨て哺乳瓶を備蓄しない場合、紙コップやスプーン等を使ったカップ・フィーティングを行うこととなります。この場合、日本栄養士会によれば、管理栄養士や保健師の指導を仰ぐこととなっています。そこで、避難所における管理栄養士や保健師の十分な配置体制が求められますが、現時点で、区の対応はどのようになっているでしょうか。区長に答弁を求めます。
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次に、すみだファミリー・サポート・センターへの登録についてお聞きします。生後2か月頃までは、あやしても、あやしても泣き止まないわが子に、私たち夫婦も大変な思いをしましたが、3か月頃から表情が出てきて、子育ての楽しさを実感する毎日に変わりました。
当時、同じ月齢の子どもをもつお母さんと話をしました。曰く、その方は、家庭の事情で育児や家事のすべてを一人で行わなければならない、いわゆる「ワンオペ育児」を一定期間する必要があったお母さんで、墨田区社会福祉協議会に委託している「ファミリーサポート」の利用をしようとしたのですが、ファミリーサポートは病気等の例外的な状況を除いて、亀沢にある事務局まで、まず出向いて、登録をしなければなりません。精神的に限界だった当時、泣き止まない子どもを遠方から、母一人で抱きかかえて登録に行くというのは、ものすごくハードルの高いことで、なくなく利用を諦めました。
他方で、類似の制度である子育て支援ネット「はぐ」は、事務局職員が自宅まで訪問して、登録作業をしてくれます。「はぐ」は病気等、利用に際しての要件が限られていて、これにあてはまらない用件で利用する場合、実質的にサポートを受けることができない家庭が区内には存在しています。本当に支援が必要な人に、用意されている制度であるにも関わらず、高いハードルが課されている現状を、改善する術はないのでしょうか。
すみだファミリー・サポート・センターについても、運用では、柔軟に自宅まで出向いて対応しているようですが、そうであれば、自宅に出向くことをしっかりと明記すべきです。「事務局まで来てください」という表現では、そもそも問合せすらせず、利用を諦めてしまいます。また、事務局に出向いて行かないでもいいように、隔月で子育てひろば等における、出張事前登録の機会を用意しているそうですが、この機会に間に合わない、または急な利用に備えて、出産前の登録も検討できないでしょうか。出産後2か月頃までは、このような外出の機会すら大きな負担となります。すみだファミリー・サポート・センターへの登録を「はぐ」並みに使いやすいものにすることについて、区長の見解を伺います。
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続いて、各種届出時の窓口における取組みについて伺います。私は、法定されている手続を受け付ける自治体窓口は、単にその事務を処理するだけではもったいない、住民に対する福祉的アプローチをかけることのできる、絶好の機会であると考えています。
平成24年4月の民法改正に伴い、離婚届の形式が変更され、事前に養育費及び面会交流について協議したかどうかを問う、チェック欄が創設されました。これもチェック欄を見て窓口で一声かける、重要なアプローチの機会だと考えました。
私は、平成25年第一回定例会において、離婚の届出時に、養育費の取決めや面会交流について、そして離婚後の生活について助言するパンフレットの配布を求めました。その後、実現に至り、現在では離婚届の配布時に、窓口で配布していただいています。現在の配付状況や離婚届の配付及び離婚届の受理時の窓口での対応の状況について、区長に伺います。
きょうは更に一歩進んで、養育費の立替払い制度について取り上げます。平成28年に行われた全国ひとり親世帯等調査によれば、養育費の受給状況は25.4%と、その数は増えてきているものの、未だに多くの子どもたちが養育費を受け取ることのできない状況にあります。
兵庫県明石市は平成30年に「明石市養育費立替パイロット事業」を始め、養育費の立替払い制度について実証実験に入りました。この事業の内容は、契約締結日から1年間、年間保証料として養育費1か月分を支払えば、受け取ることのできなかった月の養育費を保証会社が最大12か月分支払う、というものです。保証会社はその後、扶養義務者に対して債権回収を行います。明石市はこの保証料部分を上限5万円まで支払うこととし、この事業にかかる総予算は90万円としています。
また、大阪市でも今年度から、類似の制度が導入されました。吉村洋文市長(当時)は、「養育費は親の義務。社会全体で『逃げ得は許さない』という認識を広めていきたい。」との決意を述べています。
ちなみに、養育費の支払いをスムーズにすることについて公共部門が関与することは世界的な潮流で、アメリカ合衆国のほとんどの州では、養育費の不払いは犯罪となります。ドイツでは非訟・家事事件手続法に、裁判所の命令に従わない者に対しては「強制金」を課し、その支払いに応じない者は「強制拘禁」をすることができると明記されています。また、韓国でも養育費支払いに応じない者を「監置」する制度が設けられているのが実態です。これだけ、子どもたちの福祉を確保しようという強い決意が世界の政府にはあります。
日本に養育費を保証する会社はこれまでなかったのですが、このたびそうした事業を始める会社が現れ、こうした保証会社と自治体がスキームを構築することで、養育費の支払いが止まった場合、当面の養育費を扶養義務者に代わって支払うことができることとなりました。自治体としても、養育費の不払いによる子どもの福祉の確保には、結果的に公金を使うこととなるため、区としても、扶養義務者にきちんと養育費を支払わせることで、財政負担の軽減にもつなげることができる政策であると言えます。
まず、本区で離婚届を提出した夫婦の養育費の取決めや受給状況の実態を調査し、必要性が認められる場合、本区としてもこうした事例を参考に検討すべきかと考えますが、区長の見解を求めます。こうした制度を構築し、離婚届の配布時に夫または妻に配布して情報を提供すれば、救われる子どもたちが多くいることは想像に難くありません。
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また、出生時は、出生届の提出が義務付けられます。出産後の母体のレスパイトのため、この多くは、父によってなされます。そこで、出生届の届出時は、父親に対する絶好の福祉的アプローチの機会です。
私は昨年、妻の妊娠届の提出時に、大量のパンフレット類を受け取りました。母親向け、父親向け、東京都の資料、墨田区の資料など、さまざま混在していて、どれが重要でどれは後で読んでいいものなのか、判然としないものでした。この改善についてまず区長はどう考えているでしょうか。
また、娘の出産後、出生届は私が届け出ましたが、提出時には、特に資料の配布はありませんでした。
妊娠届の提出時には母親に向けたアプローチを、出生届の提出時には、父親に向けてのアプローチを、と分けて、より効果的な対応すべきではないでしょうか。公衆衛生学が専門の藤原武男・東京医科歯科大学教授によれば、出生届の時に、父親に対して厚生労働省が提供している「赤ちゃんが泣きやまない~泣きへの対処と理解のために~」の動画の存在を知らせるなど、「このウェブサイトを見てください」という端的な仕掛けが必要だとされます。赤ちゃんは当初の2か月ほど泣き止まない毎日が続きますが、これは永遠ではなく、いずれコミュニケーションを円滑にとることができるようになります。こうした動画を見せて、子育ての楽しさを実感できる時が来ることを知らせるだけで、子どもへの虐待リスクが低減する、という調査結果もあります。こうした窓口の機会を捉えた父親や母親への効果的なアプローチについて、区長の見解を求めます。
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第二に、学校図書館の蔵書数及び内容の充実について伺います。
新しい小学校学習指導要領及び中学校学習指導要領の総則には、「学校図書館を計画的に利用しその機能の活用を図り、児童の主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善に生かす」とあるように、今回の改定においては、学校図書館の計画的な利用が、大きなポイントの一つです。
私は平成28年第四回定例会において、学校図書館の蔵書の充実について質問しました。当時、文部科学省が定めた学校図書館図書標準と比較して、本区の区立小学校については25校中5校が未達で達成率80%、公立中学校については10校中9校が未達で達成率はわずか10%、23区で最下位といった状況を指摘したところ、教育長からは、教育委員会として数年間で学校図書館図書標準を満たすことを目標に計画を立てて、学校ごとの達成率を管理し、蔵書数の増加を図る、との答弁がありました。現在の、区立小学校及び区立中学校の学校図書館図書標準の達成学校数と達成率について伺います。また未達成の場合、いつまでに達成するのか、教育長の見解を求めます。
また、蔵書数を達成した後に達成すべき課題として、内容の充実の問題があります。日本全国をみると、学校図書館の蔵書については、文学が圧倒的に多い現状で、先の教育指導要領との関連性で言えば、いわゆる「調べ学習」に対応することのできる、社会科学や自然科学、歴史等の書籍が必要だと言われています。現在、各学校の蔵書配分比率は、おおむねどのような傾向にあり、課題と改善策をどのように捉えているでしょうか。
墨田区子ども読書活動推進条例が議員立法で誕生した今、これに基づいた全区的な取組みが重要です。まずは学校図書館の蔵書数及び蔵書配分比率の改善を図ることが急務だと考えますが、教育長の決意を期待します。
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第三に、内部公益通報制度について伺います。平成16年公益通報者保護法が公布され、公益通報は事業者のコンプライアンスの柱であるということが広く認識されました。本区でも時期を同じくして同年、墨田区職員の内部公益通報に関する要綱を制定し、職員による内部公益通報の手続を定めるに至りました。
この現在の運用についてまず伺います。同要綱第4条によれば、同委員会開催前に区長自らが公益通報をした職員への内容確認を行うこととなっていますが、これは具体的に区長が行っているのか、またどの程度の内容確認を行うのでしょうか。更に、第7条では、区長は、公益通報の件数、主な内容等について、毎年公表するものとするとされていますが、直近、平成17年12月21日及び29年12月21日発行の区報で公表されたものは、いずれも「内容」について未記載で要綱に明確に違反しています。またこの「主な内容等」には、第6条第4項に定める「区長が講じた措置」も含むべきと考えますが、現状は一切の記載がない状態です。両事例についてどのような内容で、どのように対処したのか、この場で要綱に従い、公表することを求めます。また、区長はこうした公表の現状をどう受け止め、改善しようとされているのでしょうか。
更に、平成7年6月6日各派交渉会決定「区議会への報告事項について」では、「区の行政運営上に影響がある重要事項」については区議会に報告することが求められています。内部公益通報の受理状況やその内容、区長が講じた措置はこれに該当すると考えますが、今後議会に報告することについて区長の見解を求めます。
次に、この要綱の問題点について指摘します。まず(1)顕名性です。本区の内部公益通報制度は通報者の名前を明らかにすべき、という顕名を要求します。次に(2)通報窓口です。本区は通報窓口を区長に限定していますが、内容によっては、第三者機関に通報し、第三者機関が区役所による指揮系統とは離れたところで処理すべきことが適当な事案もあります。また(3)通報手段について、本区は文書又はグループウェアのメールにより行うこととなっています。上記3点については、いずれも通報者に委縮効果をもたらし、公益通報を阻害するため、改善の必要があると考えます。
例えば、大阪市は、職員等の公正な職務の執行の確保に関する条例の中で、(1)顕名性については通報の要件とせず、また(2)通報窓口も市長部局のほかに通報者情報を事務局に知らせない外部通報受付窓口を用意しています。更に(3)通報手段についても一部例外を除いて制限はありません。特に公益通報者保護法と照らすと、(3)通報手段については法よりも狭いメニューしか用意しておらず、法に照らして運用すべきだと考えます。これらの改善について、区長の考えをお聞きします。
また、(4)通報者への連絡についてです。現在、通報者への連絡はどこにも定められていませんが、一定の調査を行い、判断した場合、説明責任や行政の透明性確保の観点から、通報者への報告を行うことが求められると考えますが、区長の見解を求めます。
併せてこうした公益内部通報制度が適切に運用されているかどうかを、外部の第三者に評価していただき、より透明な区政を実現する体制の整備が求められると考えますが、区長の見解を求めます。
2020年は改正地方自治法に基づく、自治体の内部統制元年となります。監査委員事務局長を再び部長級にするなど、区長のこれに対する決意を感じ取ることができます。コンプライアンスが大きく叫ばれる昨今において、内部公益通報制度の確実な運用と改善は喫緊の課題です。良心ある職員が法に則って適正に仕事ができる環境をつくること、そしてひいては区民に対して正直な区政をつくることは、民間感覚を持つと自負する区長の大切な責務であると信じます。最後に総括的に区長の所見と決意を伺います。
以上で質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。