墨田区議会自由民主党の加藤拓です。通告した2点について山本区長に質問します。
まず、墨田区中小企業振興基本条例について伺います。
平成29年度施政方針の、「働き続けたいまちの実現」の中で、新たな産業支援体制として「(仮称)すみだビジネスサポートセンター」を庁舎内に整備すること、これまでの産業支援施策を引き続き行うこと、都立産業技術研究センターの利用への支援、事業承継の支援の拡充が表明されました。これまでも、すみだ中小企業センター廃止後の産業施策については議会に報告されており、利用していた方々への対応についても説明されてきました。
しかし、区内製造業の方々にとっては、利用の有無を問わず、中小企業センターの廃止は、中小企業支援の後退ではないかと、非常に重く受け止められているようです。会派の中でもそれぞれの議員から地元の声として紹介されており、区の産業振興施策への理解が十分に得られていないとの懸念があります。
この懸念を払拭するためにも、区内事業者の皆様へ、中小企業センターを廃止しても、形を変えて墨田区として中小企業支援を積極的に行っていくというメッセージを発する必要があるのではないでしょうか。
墨田区は全国で初めて「墨田区中小企業振興基本条例」を制定し、これに沿って産業振興施策を行ってきました。すみだ中小企業センターはまさにこの条例を象徴するものだったと言えます。この条例を参考に、全国各地で中小企業基本条例が制定され、現在では200を超えています。最近制定された条例では、前文、教育機関との連携、経済団体・金融機関・大企業等の責務を盛り込んだものが増えているようです。
平成26年には、従業員の数が5人以下の小企業者を対象に含む、小規模企業振興基本法が施行されました。日本の中小企業の9割を占める小規模事業者が、事業を維持・継続していくことが、日本経済にとって重要であるとの認識から作られたものです。
このような流れに合わせて、現在の墨田区の実情、産業支援の姿勢、施策の方向性を考慮したうえで、小規模企業振興基本法、今日の中小企業基本法の内容と、教育機関との連携、商業の活性化等を盛り込んだものに、墨田区中小企業振興基本条例の改正を行ってみてはいかがでしょうか。条例の中で、墨田区がこれまで以上に、区内産業の発展のために努力する姿勢を表明することにより、非常に大きなメッセージを区の内外に発することができると考えます。また、改正案の作成を通じて、将来の産業振興施策のあり方も見えてくるのではないでしょうか。区長の見解を伺います。
区内事業者の皆様が、長く事業を続ける希望が持てるような条例改正案が、山本区長から提案されますことを期待しています。
次に、清掃関連施設について伺います。
平成12年に、清掃事業の移管に際し、20年の用途指定期間を設けて清掃関連施設が東京都から23区に譲渡されました。その後、ごみの減量や回収の効率化などにより、ほとんど利用されていないにも関わらず、この用途指定期間のために清掃関連施設が活用できません。
平成27年第4回定例会の我が会派の代表質問で、清掃関連施設の用途指定期間の変更を、23区区長会を通じて、東京都と協議ができるよう要望活動を行うことを山本区長に求めました。
その後、区長会で山本区長が問題提起を行い、区長会事務局と東京都が調整を行ったところ、区から相談があれば応じるという姿勢が環境局から示されたと聞いています。その後、昨年6月ごろ、杉並区が清掃用地を保育所にするために東京都と協議をしているという報道がありました。また、昨年10月に発表された東京都の「待機児童解消に向けた緊急対策」の中では、「清掃事務所や公営住宅など、事務事業移管で都から区市等に譲与した財産について、これまで 使途を制限していましたが、指定した用途に支障がない限り、待機児童解消を目的とした保育施設 の早期設置のため、無償で速やかに用途変更を承認します。」という方針が出されています。さらに、都議会でも議論があり、東京都では関係局と協議を行うとの答弁がありました。
保育施設への転用は認められましたが、その他の用途に関しては、道筋は見え始めているものの、いまだに不透明な状況です。
現在、清掃関連施設の用途変更については、各区がそれぞれの施設について東京都と協議している現状です。しかし、このような23区全体の課題については、23区が一体となって対応するべきものだと考えます。あらためて23区として東京都と協議できるよう、山本区長に働きかけていただきたい。区長の所見を伺います。
また、待機児童解消は非常に重い課題であることは確かですが、23区はそれぞれ待機児童以外にも多様な行政課題を抱えているため、用途変更を承認するのであれば目的を限定するべきではないと考えます。清掃関連施設を活用して、小規模でも公共施設の再編が行えれば、区政の課題を解決しつつ、間接的に待機児童対策にもつなげることができるはずです。
亀沢待機所、業平詰所、東向島の清掃事務所分室は、築年数が比較的浅く、保育所に転用しにくい形状ですが、合わせると延べ床面積は3500㎡を超えています。これらを活用することで、多くの課題解決が期待できる本区では、用途変更に当たっても、目的を限定しないことが特に有効ではないでしょうか。区長の見解を伺います。
確かに、清掃事業の質を担保するためにも、用途指定期間を設けることは理解できます。しかし、現実として、公共施設がほとんど利用されていない実態を、放置し続けることが許されていいものか非常に疑問です。23区全体では、清掃関連施設を活用できないことにより、本来得られるべきであった区民・都民の膨大な利益が失われているのではないでしょうか。現在のような大きな状況の変化があるならば、用途指定期間の終了を一括して前倒しするべきだと考えます。現状のままでは区民・都民の理解を得られないと思いますが、区長の見解を伺います。
用途指定期間の終了は平成31年度末と残りの期間は短いですが、1年でも早く23区が自由に活用できるようになることが、都民の福祉の向上につながるはずです。改めて山本区長には清掃関連施設の用途指定期間終了の前倒しに向けて働きかけていただきたい。区長の所見を伺います。
加えて、23区の議長会でもぜひとも話題に加えていただきたいと、坂下議長に要望させていただきます。
以上で質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
(区長答弁)
1 墨田区中小企業振興基本条例について
中小企業支援に取り組む区の姿勢についてだが、グローバル化の進展による産業の空洞化や、区内産業の課題が新市場の開拓や、技術力の向上から活用に変わるなど、産業構造が急激に変化する中で、時代やニーズに、的確に対応した区内産業の更なる活性化と、中小企業が抱える課題を解決する施策の展開が必要である。そこで、すみだ中小企業センターに代わり新たな産業支援体制を構築し、(仮称)すみだビジネスサポートセンターを核として、ものづくりを含む幅広い区内事業者の経営力の強化や成長分野への挑戦、新市場への進出等の取組を積極的に支援していく。墨田区中小企業振興基本条例は、昭和54年に全国に先駆けて制定するに当たり、職員180人を動員して2年をかけ、中小製造業の実態を調査したうえで、区が講ずべき産業施策の枠組みを規定している。その後、区内の産業人にも参画していただく産業振興会議において、区内産業の将来を展望したビジョンが提言され、様々な施策が展開されている。これまでに産業会館や中小企業センター等のハード整備、3M運動やフロンティアすみだ塾、新ものづくり創出拠点整備事業などが実現しているほか、産業振興マスタープランや商店街振興プランなどの策定につながっている。そうした取組は、国の小規模企業振興基本法の参考になるとともに、今なお全国から多くの自治体が視察に訪れており、各自治体の条例の基本となっている。新たな産業支援体制も現行条例と、それに基づく産業振興会議の議論を経て構築したものであるため、今後も現行条例の効果を見極めながら、産業振興施策の更なる推進に努めていく。
2 清掃関連施設について
用途変更については、平成 27 年第4回定例会での代表質問を受け、私自身が平成 27 年 12 月の特別区長会において、都への働きかけを主張し、都との協議を通して、本年度、待機児童解消対策としての用途指定の緩和に繋がったものと認識している。その他の用途に関しても、施策の緊急性及び確実な清掃事業の遂行を前提に、関係局と協議するとの見解が、都の環境局長から示された。狭小な敷地が多い本区においては、延べ床面積の合計が 3,500 ㎡を超える清掃関連施設は、様々な区の課題に対し、活用できる資産であり、用途変更に当たって目的を限定しないことは有効であると考える。用途変更に向けた23区一体となっての対応は、待機児童解消対策のような、23 区共通の緊急課題については、区長会の役員会に諮った上で、統一的な対応も可能かと思う。一方、各区が抱える個別的な課題については、それぞれの区が、都と協議する道が拓かれたので、清掃関連施設の有効活用について検討していく。用途指定期間終了の一括前倒しは、残された用途指定期間を1年でも短縮することができれば、区民の利益を損なうことなく様々な区民ニーズに対応することができるものと考える。そのためには、都区協議会で決定した「都区制度改革実施大綱」に基づき、土地、建物の譲与契約が交わされているので、都と 23 区が合意し、この大綱を改定する必要がある。そこで、用途指定期間終了の前倒しに向けて、区長会で、大綱の改定について働きかけていく。