本区におけるEVの普及状況について質問致します。
EVとは、エンジンを使用せずモーターを動力として走行する電気自動車のことで
あり、走行時に二酸化炭素を排出せず、地球環境負荷の小さい自動車として注目されています。「EVシフト」とは、ガソリンなどの化石燃料を使用する自動車からEVへの転換をさしています。
2015年のCOP21で採択されたパリ協定では、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち(2℃目標)、1.5℃に抑える努力をする(1.5℃目標)」ことが約束されました。ここでは地球温暖化を抑止するために、温室効果ガスの排出を削減することが各国に求められています。二酸化炭素など温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「脱炭素社会」の構築が急がれており、日本でも2050年カーボンニュートラルが宣言されました。
脱炭素社会を実現するための世界の取り組みはいよいよ本格化しています。
化石燃料を使用する従来型の自動車と比較して、EVは走行中の二酸化炭素排出量がゼロであり、地球温暖化の主要な要因である温室効果ガスの排出削減に大きく貢献します。また、大気汚染物質の排出もないため、大気質の改善にも寄与します。
さらに、エネルギー効率の高さもEVの大きな利点であります。電気エネルギーは、石油やガソリンと比較して、より効率的に動力に変換されます。更に再生可能エネルギーの導入拡大と連動することで、持続可能なエネルギーシステムの構築にも貢献する可能性があります。
このように、EVの普及は、環境、経済、エネルギー政策の各面で重要な意義を持ちます。また区民の生活を圧迫している燃料費の高騰に対しても、EVシフトは車両維持費の削減につながります。
日本では、当時の菅総理大臣が2021年1月18日の施政方針演説において、「2035年までに新車販売で電動車100%を実現する」ことを宣言しました。この目標では、電動車としてEVだけでなくHVやPHEV、FCVなども含めています。世界的なEVシフトへの潮流のなかで、日本でも明確な方針が打ち出されたことで、国内のEVシフトは、徐々に進んできていますが、地域により差が生じています。
自動車メーカーもEVシフトへの姿勢を表明しており、例えばトヨタは、2030年までに自動車の電動化投資として8兆円、そのうちEVに対しては車載電池の開発など4兆円をあてることを発表しました。また、トヨタはこれまでは「2030年までにEVとFCVをあわせて世界販売台数200万台」を目標としていましたが、「2030年までにEVだけで世界販売台数350万台」と目標を大幅に引き上げました。他の自動車メーカーも各社EVシフトの方針を打ち出しており、EVの普及が更に加速的に進んでいくと思われます。
現代社会において、環境保護と持続可能な交通システムの構築にEVシフトは有効な手段の一つでありますが、残念ながら墨田区では普及が遅れていると感じられます。地球温暖化と大気汚染の対策として、温室効果ガスの排出削減は急務であり、EVはその重要な役割を担います。しかし、その普及には複数の障壁が存在し、これらを乗り越えるための積極的な施策が求められています。
EVを購入する際に受けられる支援として、主に国からの補助金となる「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)」と、地方自治体独自の補助金の2種類があります。これらは併用として受け取ることが可能となっています。
国は、CEV補助金の目的として”2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、環境性能に優れ、災害時にも非常用電源として活用可能な車両について、需要創出及び車両価格の低減を促すと同時に、車両の普及と表裏一体にある充電・水素充電インフラの整備等を全国各地で進めること”だと述べています。
また自治体の補助金を用意する東京都でも、”「2050年CO2排出実質ゼロ」に貢献する「ゼロエミッション東京」の実現に向け、都内で新車販売される乗用車を2030年までに100%非ガソリン化することを目指しています”と述べており、二酸化炭素の排出量を削減することを大きな目的として実施されている施策であるとわかります。
現在、本区では「墨田区地球温暖化防止設備導入助成制度」のひとつとして充電設備の設置者に対して、工事費用の5分の4、上限7万5千円の補助をしており、令和5年度当初予算内では予定件数26件、予算額1,950千円が計上されておりましたが利用者は5件に留まっています。この低い利用率は、補助制度の認知度不足や手続きの煩雑さが原因と考えられますが、区長の所見を伺います。また利用率向上には普及啓発が必要な手段と考えますが併せて区長の所見を伺います。
現在、墨田区ではEV購入者に対しての補助制度はありません。しかし近隣区では江東区、足立区、江戸川区などで平均10万円、葛飾区では最大25万円の車両購入補助が行われています。他の事例を参考にしながら、本区においても購入時の補助制度を導入すべきと考えますが区長の所見を伺います。
同時に考えなくてはならないのは充電環境への不安であり、大きな普及の妨げとなっています。
昨年10月に経済産業省より発表された「充電インフラ整備促進に向けた指針」においてEVの普及に必須となる充電器のインフラ整備指針を整理し、「2035年までに、乗用車新車販売で電動車100%」という政府目標の実現に向けた充電器設置方針をまとめております。
他区でも急速な設置が進んでおり、先進的な例として世田谷区では公共施設や
商業施設に多数の充電ステーションが設置され、利便性が向上しています。世田谷区では特に、住宅地域における充電ステーションの設置に力を入れており、EVユーザーの日常生活を支えるインフラが整備されています。
また隣接の江東区でも50を超す充電設備が区庁舎・区立公園や商業施設の駐車場などに設置されており、区内外の方が多く利用されています。
一方墨田区ではEVの認知度が低いうえに充電ステーションが自動車販売店など民間施設を含め約20箇所しかなく、充電インフラの整備が不十分です。
EVの急速充電設備は、ガソリン車やディーゼル車におけるガソリンスタンドに相当します。
普通充電設備は、旅行先など長時間の充電時間を確保できるケースに有効なため宿泊施設等への設置が進むべきであり、短時間の滞在となる施設や充電目的で来訪するスポットへは急速充電の設置を早急に行う必要があります。
先述の経済産業省発表の「充電インフラ整備促進に向けた指針」の中で充電器設置目標は、従来の「2030年までに15万口」から「30万口」に上方修正されているなかで、本区においても急速な充電設備の普及が必要と考えますが区長の所見を伺います。
EVの普及には、区民の意識の変革も重要です。現状、多くの区民はEVのメリットや使用方法、充電インフラの利用方法に関して十分な情報を持っていません。この情報不足は、EVの普及を阻害する大きな要因の一つとなっています。
EVが普及している渋谷区では、区民への啓蒙活動に力を入れており、EVのメリットや使用方法に関するワークショップやセミナーが定期的に開催されています。これにより、区民のEVに対する関心と理解が深まり、普及が加速されています。
これらの課題を踏まえ、まず補助制度の周知と手続きの簡素化を図るべきです。
オンラインでの申請や、補助金に関する十分な告知が効果的と考えます。
区民に身近な部分で、区内循環バスにおいても令和3年に運行終了となっていた電気バスの運行が車両の進化により令和6年3月初旬より再度導入を予定されている今だからこそ、EVのメリット、使用方法、維持費用、充電方法などに関する正確な情報を提供し、企業や商業施設と連携をとり、EVに関するプロモーションや試乗イベントを開催することなどにより、EVに対する興味と関心を高めることができると考えます。
そして繰り返しになりますが、充電インフラの拡充が急務です。購入を検討し断念した方の声を伺うと、充電に対する不安を多く耳にします。特に、大型商業施設や公共施設周辺に充電ステーションを増設することで、EVの利用者にとって大きなメリットとなります。
墨田区におけるEV普及は、環境保全のみならず、住民の生活の利便性向上にも寄与する重要な取り組みです。区民の生活に直結する選択肢を持てる他区の事例を参考にしつつ、墨田区ならではの施策を展開することで、この課題を乗り越えることができると考えます。
世界的な環境保全のため、国・都として急速に進んでいくであろうこの取り組みに、本区としても遅れを取らず、先進的に進んでいくことにより、古く良き歴史と先進的取り組みが共存する墨田区を目指していくべきと考えますが、区長の所見を伺います。
区長答弁