平成30年度第四回定例会 一般質問 坂下修

私は、先日の樋口議員の代表質問に対する、山本区長2期目の出馬表明に当たり、①区長のこの4年間の区政運営の評価と②今度の展望について、質問します。
さて、区長は、平成27年4月、「すみだの『夢』実現」を掲げて区長選に挑み、70%超という多数の支持を得て当選されました。区長とともに、新時代の墨田区を切り拓かんと「夢」をみた区民も多くいたことと思います。そうした区民の大きな期待を背負った山本区長にとって、この4年間は、墨田区の新時代の幕開けを担う、重要な時間であったと考えます。
まず、区長1期目の区政運営の評価について伺います。
第一に、評価指標について伺います。この検証作業を行うにあたり、区長が選挙にあたって掲げた公約や平成27年6月10日、本会議において行った所信表明を改めて読み返しました。区長の掲げた公約が客観的にどう達成されているのか、これを考えるとき、区長が掲げた公約は漠たるものであるという印象を持っています。例えば昨今当選した首長の公約の中には、茨城県つくば市の五十嵐立青(たつお)市長のように、「市長公約事業のロードマップ」を示して、市民や議会にとって検証可能性を確保したり、山本区長と同時期に当選した、渋谷区の長谷部健区長のように具体的事業を掲げている例が多くなっています。区長は、常日頃から「民間感覚」という言葉を多用されていますが、この意味することのひとつはPDCAサイクルを回していくことであり、区長の公約は更なるブラッシュアップが必要であると感じています。こうした観点からすると、区長の2期目にあたっては、より具体的な政策とともに、成果目標を示した、いわゆる「マニフェスト型」の選挙を戦う必要性があるのではないかと感じています。
区長は、1期目の公約をどのように検証され、自己評価されているのか、まず概括的に伺います。そして、区長2期目の公約の評価指標のあり方について、ただいまの指摘を踏まえて具体的に答弁願います。
第二に、区長が1期目の所信表明の中で述べられた区政運営の基本姿勢について伺います。
この質問の一つめは、この4年間の街の変化についてです。区長は、この所信表明の冒頭で、区長選挙を通じて得た感想として、区内全域を見て回り、子育てや教育に関する施策の重要性を特に感じたと述べ、この4年間の最重点課題として位置づけました。また、区内のシャッター通りや操業されていない工場に言及し、地域産業振興について改めて決意を述べられました。
区長はこの4年間、区長として地域を見て回ったと思いますが、この4年間の区の変化について感想を伺います。またこの変化への対応として特に区長が具体的に取り組んだことについて伺います。
質問の二つ目は、「民間感覚と区民目線」及び「スピード感と開かれた区政」についてです。区長は、所信表明の中で、「民間感覚と区民目線による、更なる可能性を追求した区政の展開」と「スピード感のある、区民に開かれた区政の推進」を図ることを表明されました。
民間感覚が反映されている事業としてシティプロモーション戦略、施設使用料の見直し、職員の積極的な外部派遣があり、また区民目線の事業としてタウンミーティングを実施されるなど、区長が新たな取組みに果敢に挑戦していることは高く評価しています。
他方では、この間の議会質疑を拝見していますと、民間感覚に疑問符を持つ事業も散見されました。各会派が共通して取り上げた問題として、荒川緑地フィールドハウスの改修や障害者雇用に関して法定雇用率を遵守できていなかった問題、自民党が取り上げた業平小学校の壁面緑化事業など、区長のキャッチフレーズとは裏腹に民間感覚に疑問をもつ事業もいくつか見られたのもまた事実です。
また、スピード感の不足している事業として、これも多くの会派が取り上げましたが、みつばち園の療育の相談が、申込みから相談までが3カ月掛かっている問題があります。区民目線の不足については、6会派の合意により、図書館条例が修正議決されるなど、議会がその権限を行使して、区民目線を注入した事業もありました。
更に、スピード感を意識しすぎて拙速な事業が散見されました。第3子以降に小学入学祝商品券の交付を行う就学応援事業については議会がその目的と政策効果の関連性について疑問があるとして修正議決を行ったほか、「23区初」と銘打った事業の多くが、その予算の根拠や効果に疑義が呈される結果となりました。
これら高い評価もある一方で、反省点も多かったこの4年間について、その原因を区長はどのように分析し、2期目に向けて展開されようとしているのか、見解を伺います。
更に、平成28年第四回定例会の中で、区長は「民間感覚」の意義について「職員が柔軟な発想を持ち、前例踏襲、事なかれ主義ではなく、前向きにどうすれば実現できるかという視点で取り組むこと」と述べています。区長は就任挨拶の中で「行政にはありがちな『できない理由』から入るのではなく、『できるためにはどうするか』という視点を職員に求めた」と述べていますが、こうした発想はこの4年間で根付いてきたのでしょうか。見解を伺います。
第三に、所信表明中の区政運営の基本的な取組方針について、任期を終えるにあたり、一定の評価を行うべきものについて伺います。
まず一つ目は、山崎前区政の継承です。区長は前区政を肯定的に評価した上で、「東京スカイツリーの誘致をはじめ、区民生活に関わる総合的な施策展開を行い、現在の大きな可能性を持った本区の基盤を築いていただき、これを着実に仕上げる」と述べています。この4年間で、山本区長はこうした礎の下に、懸案事項だったすみだ北斎美術館や大学誘致を実現しました。この点を高く評価します。他方で、政策の独自性にやや欠けた印象も持っています。議会で多くの議員が用いたように、「山本カラー」を更に押し出す2期目にすべきだと考えます。2期目の区政運営にあたり、改めて「山本カラー」の意義とその強い打出しへの決意を伺います。
二つ目は、新基本計画の着実な推進です。新基本計画は、議員諸氏のご協力の下、私が委員長を務めさせていただいた、基本計画調査特別委員会において熱心にご議論いただき、平成28年に策定されました。この間の予算編成をみても、これに基づく着実な予算化が図られており、この点は評価しています。しかし、この3年間をみても、地方消費税の精算基準の見直し、幼児教育・保育の無償化や、消費税引上げ段階での法人住民税の更なる国税化といった予期しない事情が次々と発生しています。新基本計画の着実な推進の根拠となる、財政基盤は、区の埒外(らちがい)の事情で大きく揺らぐ状況にあります。また増え続ける民生費について大胆な改革を行う必要性もあります。基本計画の着実な推進という目標とこうした財政環境の変化との矛盾について、どう解決していくのか、区長の見解を求めます。また、区長は所信表明の中で、行財政改革のあり方について「数多くの行財政改革の取組がなされてまいりましたが、民間出身の私にとっては更に鋭いメスを入れる余地があるものと考えて」いる、と述べています。1期目に行政を総点検した結果、どういった行財改革を実行し、また次期に実行されていくのでしょうか。
三つ目は、災害対策の充実についてです。区長は所信表明の中で「都市計画等によるハード面の整備に加え、地域防災計画の見直し等による有事の際の初期初動・避難対策など、防災対策を区の最重要課題としてこれまで以上に力を入れていく」と述べています。私たちも、区民福祉の原点に立ち返り、来年の区議選においては防災対策を最重点課題として取り組む方針を固めており、学校体育館への冷暖房の配備を中心として、来るべき大震災、台風と高潮が重なる江東5区の未曽有の大水害に対して、現実的な対策をひとつひとつ提案していきます。このような中、防災拠点会議ごとの防災訓練の内容を避難所運営型にしたり、水害時に水平避難する方針は打ち出されているものの、具体的にどこに逃げたらよいのか、垂直避難となった場合、どのような体制で救出されるのか、具体的な対応が課題となっています。この4年間の災害対策、特にソフト面での初期初動・避難対策について今述べたことを含めて総括し、今後の展開について伺います。
四つ目は、大学誘致についてです。紆余曲折ありましたが、千葉大学及びi専門職大学の誘致実現は区長1期目の大きな成果であり、高く評価するものです。今後、「大学を核として、若者の流れを呼び込み、地域のにぎわいを創出し、地域経済、商業の振興をもたらす」「大学の知識、技術を生かした産学官連携により地域産業を活性化する」「小中学校との教育交流や生涯学習の機会も増え、区民の皆さんの文化的活動」という区長の公約の実現が求められます。大学誘致の自己評価と、2020年及び2021年に開学を迎える二つの大学についての今後の展開を答弁願います。
次に、次期区長の任期中に想定される課題について伺います。次期任期中は、先ほど述べた大学の開学に加えて、総合運動場の開設、浅草・とうきょうスカイツリー駅間高架下開発計画の店舗等開業、東京五輪の開催、新保健センターの開設、更には押上2号踏切の除却が実際行われるなど、大きなプロジェクトが目まぐるしく展開される4年間となります。
まず、国際観光都市の実現と東京オリンピック・パラリンピックを見据えた取組です。
区長は所信表明の中で、「東京スカイツリーの開業3周年に触れ、東京オリンピック・パラリンピック開催までに実施すべきことをソフト・ハードの両面から、官民一体となって取り組むとともに、その効果を区内全域で享受できるよう推進していく」としています。東京五輪の取組みについては、ボクシング競技の周知や学校等でのプログラムにより、一定の成果が出ていると考えますが、一般区民が東京五輪によって何を学び、何を次世代に継承していくのかについての理解はまだまだであると感じます。東京五輪を挟む次期任期中に、区長はどのようなレガシーを残し、次に区政を紡いでいくのか、明確なメッセージを求めます。
更に、総合運動場や新保健センターの整備についても、次の任期中に開設される大きなプロジェクトであり、特に区民福祉にとって身近で重要な施設となります。これら施設について、区長選を通じてこの現状の進捗とともにコンセプトを訴え、住民を巻き込んでいくことが必要だと考えます。この点について、区長の見解を求めます。
また、東武鉄道との関係というでも正念場を迎えます。任期中には押上2号踏切の除却や浅草・とうきょうスカイツリー駅間高架下開発計画の店舗等開業が控えています。議会としても議論してきたように、区の立場を明確にし、住民福祉の増進のためのまちづくりにしっかりと交渉に臨む、覚悟と努力が必要です。この点についての見解も併せて求めます。
私たち自由民主党は、区長との政策協定に基づき区長の方針を支持しつつも、より区民目線に立った時々の具体的な政策提案と批判的評価を通じて、区政をまっすぐに支えていこうと考えています。
区長2期目に向けた具体的展開について、力強いリーダーシップを求め、以上で質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。

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