平成30年度第二回定例会 代表質問 加藤拓

墨田区議会自由民主党の加藤拓です。会派を代表いたしまして、山本区長及び加藤教育長に質問いたします。

初めに、保育所の待機児童対策について伺います。
墨田区ではこれまで待機児童の解消を目指し、保育所定員の拡大に努めてきました。特に、直近2か年の実績は、951名の拡大と、平成28・29年度の墨田区待機児童解消計画で設定した800名の定員増を超えるものとなりました。その結果、平成30年4月1日時点での保育所整備率は53.2%となり一定の水準を超えたものと認識しています。この結果を高く評価するとともに、関係部署の職員の皆様のご尽力に感謝申し上げます。
一方で、本年4月1日時点での待機児童は193名と、待機児童の定義の変更があったこともあり、昨年度を上回る結果となってしまいました。
引き続き待機児童対策を行う必要がありますが、一般会計予算における保育所関連費用は公立保育園の人件費を除いても、昨年度比で約25億円増となり、150億円を超えています。今後もこれまでと同様のペースで認可保育所を増設していくと、近い将来財政に深刻な影響が出ることが懸念されます。

区内での単身者向けマンション建設の急増などの要素を踏まえて、直近の未就学児人口の推計を取りつつ、必要な定員は確保していくべきですが、その一方で、認可保育所の増設以外の待機児童対策を講じることで、墨田区の子育て支援を、着実に持続可能なものにしていく時期に来ているのではないでしょうか。
山本区長の見解を伺います。併せて来年10月から予定されている幼児教育の無償化について、区の財政や事務量の負担はどの程度の規模になるか、見通しがあれば伺います
現在では、定期利用保育等の定員が少なく、時短勤務やパートタイムの労働を希望していても、認可園以外に受け皿がありません。そのために、フルタイムでの勤務を続けたり、待機児童になったりしているケースには、定期利用保育の拡充を行い、利用時間の割り振りを行うことで、認可園だと3人分必要な枠が2人分で済む可能性があります。
また、育児休業を取得することが可能でも、早期に保育所に入所する理由の一部に保育の不安があるかもしれません。28年度から行っているなかま保育のように、保育の不安を軽減する取組を拡充することで、自発的な育児休業の取得の促進につながる可能性があります。

加えて、子育て広場のような在宅での子育て支援施策の拡充により、保育所入所ではなく在宅での子育てを選ぶ可能性があります。
このような保護者の選択肢を増やす施策を充実させることは、認可園の増設よりも財政負担の少ない待機児童対策になると考えます。早急に未就学児の保護者への意向調査を行い、来年度以降に認可保育所増設以外の待機児童対策の施策展開を行うべきです。区長の見解を伺います。
また、東京都では、今年度から「働くパパママ育休取得応援事業」を始めました。これは、1年以上の育児休業を取得させ、育児中の雇用を継続する環境整備を行った中小企業や、男性従業員に育児休業を連続して取得させ、育児参加を促進した企業に対して奨励金を交付するものです。
このように、企業側にも育休取得を促進する取組を行ってもらうことも待機児童対策につながります。待機児童対策は23区共通の課題であるため、国や東京都に対して、企業に対する協力を得られるよう、特別区長会として働きかけていただきたい。区長の所見を伺います。

次に、新保健センターの整備について伺います。
第一回定例会でのわが会派の代表質問に対して、「デザインビルド方式」の採用と、コンストラクションマネジメント業務委託の導入により、「墨田区新保健センター等複合施設整備基本計画」で示している45億円を超えないように整備を進めていくとの答弁がありました。同時に、今年度にはコンストラクションマネジメント業務委託を活用して、新施設のデザインビルド発注に向けて要求水準を作製していくとの答弁もありました。
本区の非常に厳しい財政状態を考慮し、品質を維持しつつも建設費45億円の水準は厳守していただきたいと考えています。現在検討している方策について伺います。
公共施設の整備にあたっては、その内容について、将来を見据えたビジョンを持ち、様々なステークホルダーを交えたワークショップ形式で練り上げていくことが重要であると指摘しました。これに対し、要求水準等を作成する際に、区民の方や新施設の関係者に、ワークショップ形式などの意見を伺う機会を検討したいとのことでしたが、時期やメンバーについて、具体的にお知らせください。

一方で、新たに整備する公共施設は60年先まで使用する前提であり、この新保健センターも同様です。開設当初は綿密に練り上げた内容であっても、長期間での社会情勢や区民ニーズの変化により、公共施設の再編等による機能変換にも備えておく必要があります。
これまでの公共施設マネジメント実行計画で「将来の機能転換等にも柔軟に対応できる設計を推進します。」と示されている方針を順守していただきたい。また、デザイン性の高い施設は、改修の際の高額の負担や、低利用の空間の発生等の恐れがあります。維持補修の負担が少なく、建物を隈なく活用できる、汎用性の高い設計にすることを強く求めます。区長の見解を伺います。
加えて、今定例会の報告事項にもありますが、建設候補地である都有地の下水道工事を行っていない部分について、土地開発公社による先行取得の方向性が示されています。建設候補地を分割して取得すること、下水道工事と並行して建設が進むこと、下水道工事の進捗状況などの要因によって、新保健センターの工期に影響があるのか伺います。

次に、葛飾北斎の作品を通じた国際交流について伺います。
平成31年度は、日本とポーランドが1919年に国交を樹立してから100周年に当たります。19世紀から20世紀にかけて、ポーランドには「フェリクス・ヤシェンスキ」という葛飾北斎の作品を始め多数の日本美術を集めた収集家が居ました。彼のコレクションは、かつてのポーランド王国の首都であった古都クラクフにある、「日本美術・技術博物館」に所蔵されています。ヤシェンスキは、特に「北斎漫画」を熱愛しており、「マンガ」を自身のペンネーム使用していたことから、このセンターには「マンガ館」という愛称が付いています。
昨年8月に、山本区長は、駐日ポーランド大使がすみだ北斎美術館に来館した際に、前駐ポーランド大使、当時の菊田館長及び外務省の審議官を交えて懇談し、北斎美術館とマンガ館の交流を、国交樹立百周年の記念交流事業の目玉にすることで意見が一致したと聞いています。これは、本区選出の松島みどり衆議院議員が経済産業副大臣だった平成26年、出張でポーランドを訪問した際に、すみだ北斎美術館と「マンガ館」との交流話が持ち上がったことが発端となったとのことです。

懇談の結果を受けて、北斎美術館へ今後の交流の進め方についての問い合わせの書簡が送られていましたが、先月18日に1年程度経過しても返事がないことを指摘されたとのことで、誠に遺憾に思います。
やや減少傾向にある来館者数の回復のためにも、この節目の事業に協力することで、北斎美術館の海外へのPRや、他の美術館との連携の強化につなげることを期待しています。資料の貸出等、可能な限り協力するべきであると考えますが、来年に向けて、今後どのように進めていくのか、区長に伺います。
また、このような交流は、周年事業に対する外務省からの補助や、地域と共働した美術館・歴史博物館創造活動支援事業等、文化庁の補助事業の対象になる可能性が非常に高いと思われます。こちらの検討状況についても合わせて伺います。
ポーランドは、18世紀のロシア等による領土分割により国家を喪失してしまいます。以来、独立運動を行った多くのポーランド人がシベリアに流刑となった他、第一次世界大戦ではポーランドの地がドイツ軍とロシア軍の戦場となった結果、流民となった人々がシベリアに流れていきました。

その後、ロシア革命とそれに続く内戦により、シベリアのポーランド人は難民化し、多くの孤児が飢餓と疫病で悲惨な状態にありました。日本政府と日本赤十字社は、この孤児たち765名を1920年と1922年の2度にわたって受け入れ、東京の児童養護施設と大阪の日赤病院看護婦寮に収容し、全員の健康を回復させたうえで、独立を回復した祖国ポーランドに移送しました。この孤児の方々が、「極東青年会」という団体を組織し、日本の素晴らしさを祖国で紹介してくださったおかげで、ポーランドは世界でも屈指の親日国となったと聞いています。
親日国の都市とは、国際交流がより円滑に進むことが期待できます。この度の葛飾北斎の作品を通じた記念交流事業が実現した後も、クラクフ市等、ポーランドの都市との交流を検討するべきと考えますが、区長の見解を伺います。また、葛飾北斎を通じたポーランドとのつながりや、日本とポーランドの歴史的な経緯についても、区民に周知する機会を設けることを望みます。合わせて伺います。

次に、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会への取組について2点伺います。
1点目は、「あしたのジョー」を用いたPRについてです。
墨田区では、国技館がボクシング会場になること、有名ボクシング漫画「あしたのジョー」の作者であるちばてつや氏が本区と非常に深い縁のある方であることから、気運醸成のために「あしたのジョー」を用いたPRキャンペーンを行うことになっています。シティドレッシングを含め、積極的な展開を期待しています。
現在、区内事業者の方々にも商品の販売等によって一緒に大会を盛り上げていただくために、6月1日から商品化許諾申請の受付が始まっています。
「あしたのジョー」のファン層は50代から60代が多く、比較的消費力の高い世代です。ゴールデンウィークに行われた「あしたのジョー×すみだ」企画展示と同時に同じフロアで開催された連載50周年記念「あしたのジョー」展では、この世代の方々が多くの物販品を購入している姿が見受けられました。ファン心理をつかむことができれば、価格に関わらず購入していただけると思いますので、区内事業者の方々に多くの商品を開発・販売していただき、大いに機運を醸成していただくとともに、区内産業の活性化につながることを期待しています。
商品化許諾申請に先立つ説明会には、どの程度の事業者が参加され、どのような商品が予想されるか、まず区長に伺います。
また、商品を開発しても、販売する機会が限られてしまうと、気運醸成の効果も限定的になってしまいます。まち処や観光案内所以外の販売場所の確保や、イベント等での販売機会の創出も行うべきと考えますが、区長の見解を伺います。
また、オリンピック会場となる両国国技館では、年に数回ボクシングのビッグマッチが行われます。ボクシングファンには「あしたのジョー」に親しみを覚える方も多いでしょう。商品販売により気運醸成及び周知を行う大きな機会ではないでしょうか。現在、両国の観光案内所は午後7時半で閉店しますが、夜間まで大規模イベントが国技館で行われる際には、営業時間の延長も考慮するべきではないでしょうか。区長の見解を伺います。
2点目は、墨田区の子供たちへのオリンピック・パラリンピックを体験する機会の提供についてです。
現在、教育現場では、各種のオリンピック・パラリンピック教育が行われています。この教育の結果として、大会以降の価値あるレガシーが形成されることを期待しています。

現在の取組に加えて、実際に競技が行われている現場を子供たちに体験させることによって、将来にわたって深く記憶に留めることができ、教育の成果がより大きくなるのではないでしょうか。
競技を観戦したい子供たちが全て希望を叶えられるわけではありません。希望者に大会仕様に整備された競技会場や競技に向けた公開練習を見学させる等、何らかの形でオリンピック・パラリンピック大会を体験できる機会を設けていただけるよう、東京都や大会組織委員会等、関係機関に働きかけていただきたい。区長及び教育長の見解を伺います。
大会まで残り2年となり、マラソン競技のコースが決まるなど、目に見えて大会に向けた準備が進んでいます。新たな取り組みを提案する時間は残り少ないと考えます。今年度の早い段階で協議を進めていただくことを望みます。

次に、日本遺産について伺います。
昨年度の産業都市委員会や、今年度の予算特別委員会で、我が会派から隅田川での日本遺産の登録を目指すことを提案してきました。
日本遺産とは、地域の歴史的魅力や特色を通じて、我が国の文化・伝統を語るストーリーを文化庁が認定するものです。認定されたストーリーを構成する有形・無形の文化財群を地域が主体となって総合的に整備・活用し、国内外に戦略的に発信していくことにより地域の活性化を図ることが目的とされています。日本遺産には、単独の区市町村による「地域型」と、複数の自治体による「シリアル型」の2種類があります。
わが会派も、4月に「シリアル型」で淡路島が認定されている淡路市を調査させていただき、その効果への期待を伺ってきましたが、この日本遺産に認定されると、当該地域の認知度が向上するとともに、地域住民のアイデンティティの再確認や地域のブランド化等につながります。また、3年間観光施策等に国の補助金を活用できるようになるため、認定によるメリットは非常に大きいと考えます。区長及び教育長の認識を伺います。
文化庁は、日本遺産を2020年度までに100件認定するとしており、今年度までに44道府県67件が認定されています。
しかし、昨年度まで国分寺市・府中市が古代武蔵国府・国分寺で、今年度はいずれも複数の都県によるものですが、台東区が岩崎家、足立区・荒川区・江東区が奥の細道で申請していますが認定に至っておらず、未だに東京都では一件も日本遺産に認定されていません。この現状について、区長の見解を伺います。
日本遺産認定の条件に、「構成文化財に国指定・選定のものを必ず一つは含めること」があり、区内に極めて少ない墨田区単独で魅力あるストーリーを作ることは不可能です。そこで、「隅田川」でストーリーを作り、周辺自治体との「シリアル型」での認定を目指すべきだと考えます。隅田川には、重要文化財である清洲橋、永代橋、勝鬨橋が架かっており条件を満たすことが可能です。
隅田川流域は、江戸時代以来、大災害とそこからの復興を繰り返し発展してきました。明暦の大火からの復興事業として両国橋、永代橋の架橋と本所深川の開発が行われ、江戸の町人文化が大いに発展しました。関東大震災からの復興事業として、現在の橋梁群の再架橋や、錦糸公園、隅田公園の整備、言問小等鉄筋コンクリートの小学校建設が行われ、流域の近代化が進みました。また、戦後の復興を象徴するとも言える、東京オリンピックの関連道路として佃大橋が架橋されました。

江戸時代から現在までの歴史を踏まえると、日本遺産認定にふさわしいストーリーを作ることが十分可能だと考えます。江戸時代からのストーリーを作れば、多くの区民の方々の善意で取得した隅田川両岸景色図巻も構成文化財として活用できます。
また、昨年12月に、「隅田川橋梁群(勝鬨橋から吾妻橋)と築地市場他を含む復興関連施設群(東京都慰霊堂等)」が、日本イコモス国内委員会により、「日本の20世紀遺産20選」に選出されています。
加えて、最近は目立った活動が見受けられませんが、平成23年度から、墨田区・江東区・荒川区・台東区・中央区の流域5区と東京都による「隅田川ルネサンス」の広域連携の取組が行われており、連携の下地ができています。
この流域5区で、復興と発展をストーリーに、隅田川で日本遺産の認定を目指してはいかがでしょうか。重要文化財の所在地が中央区と江東区にあり、所有者が東京都であることから、先々は主導的な立場になることは困難かもしれませんが、ぜひ墨田区から他区に働きかけていただき、東京都の日本遺産第一号を目指していただきたいと思います。

申請の直接の窓口は教育委員会となりますが、観光や文化振興、都市整備等、多くの分野にまたがる取組になりますので、区長及び教育長に所見を伺います。

最後に、今次計画の最終年度にあたる、学力向上新3か年計画について伺います。
墨田区では、小中学生の学力に大きな課題があることから、平成16年度より、「開発的学力向上プロジェクト」による学力向上の取組を行ってきました。残念ながら期待通りの効果は表れず、十分な成果を上げているとは言い難い状況となっています。
平成25年度からは、27年度までの「学力向上3か年計画」を策定し、より具体的な数値目標を設定した上での対策を行いました。掲げた数値目標の達成には至りませんでしたが、この結果により、これまでの課題と取るべき対応が浮かび上がってきました。現在は、それを踏まえて、今年度までの3か年計画に基づいての学力向上の取組が行われています。
平成29年度の墨田区学習状況調査の結果によると、D・E層の割合、「読む能力」「書く能力」「言語についての知識・理解・技能」の平均正答率、「思考・判断力」の平均正答率のいずれの数値目標においても、目標値を達成している教科、観点が多くあり、一定の成果が上がっているように見受けられます。

特に、小学校低学年、中学年でのD・E層の割合の減少は、多くの児童に最も基礎的な学力の定着がなされ、今後の着実な学力向上が期待できる要素と理解できるのでしょうか。現状の認識について教育長に伺います。
一方で、小学校高学年から中学生になると、各教科で分厚いB層とD層、層の薄いC層という傾向が顕著になっています。また、各学校の取組により、D層からC層へ学力が向上している生徒が増えているとも聞いています。D層からC層に向上した生徒にはC層以上への定着、C層の生徒にはD層への低下の防止が目標達成への鍵となると考えます。計画最終年度の今年度、学習意欲の向上や、学力の定着についてどのように取り組むのか教育長に伺います。
さらに、理科と社会については、目標達成が全く見込めない状況です。これまでも理科教育の充実には取り組んできたものの、改善が見られません。今年度以降の見通しについても伺います。
加えて、今回の計画においては、東京未来大学との共同研究での成果ある取組の全区実施や、中学校すたーとブックの配布について、28年度に研究や検討を行い、29年度から実施することになっています。

それぞれの事業について現在把握している成果と課題について、どのように学力向上につながっているかお知らせください。また、学力の定着について、我々は学校における放課後学習を重要視しています。28年度に各種制度の見直しを行った上での放課後等の学習支援の成果についても合わせて伺います
今回の計画期間は今年度までですが、計画では平成37年度までの長期目標が掲げられています。来年度以降の長期目標実現に向けた新計画では、現在把握している課題への対応等が盛り込まれていくと考えますが、明らかになっている課題と方向性について教育長に伺います。
義務教育において身に付ける学力と知識は、その後の社会生活を営む上での基礎となります。墨田区の子供たちが将来にわたって技能の習得や他者とのコミュニケーション、高等教育での学習等を円滑に進められ、その進路の選択肢を少しでも多く持てるよう、学力向上と定着の取組をより一層進めることを求めます。最後に教育長の所見を伺います。
以上で質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。

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