定例会一般質問 松本ひさし

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自由民主党の松本ひさしです。通告してある大綱2点につきまして、区長、教育長に伺います。

第一に、すみだ北斎美術館をプラットフォームとした新しい社会実験について区長に伺います。

当該美術館は現状、本区事業の他の何よりも大きく注目されており、この美術館をプラットフォームとして、様々な社会実験を行い、新しい展開を作り上げていくことこそ、墨田区の将来につながっていく、そうした観点から質問します。

過日開館したすみだ北斎美術館は、世界に名だたる葛飾北斎を顕彰し、またプリツカー賞受賞の建築家妹島和世氏の建築設計であることから、世界中に注目される施設であると確信します。

他方で、ガバメント・クラウド・ファウンディングの手法を用いた市民参加型施設であることからも、既に大きく注目されています。ここに、すみだ北斎美術館に多額のご寄附をいただきました個人及び法人の皆様に、会派の総意として改めて深く感謝の意を表します。誠にありがとうございました。

また、平成26年度予算案審議における我が会派の付帯決議を重く受け止め、その内容を履行してくださった理事者の皆様、こうした結果を導こうと東奔西走してくださった区民及び区内事業者の皆様にも併わせて謝意を表します。

まず、開館当日のオープニングセレモニーで、テープカットされた山本区長は、どのような思いを持たれたのか、ご所見を伺います。また、11月22日の開館から一週間が経ちましたが、来館者数はどれくらいであったのか、また、その人数は想定に対して、どうであったのかについて、伺います。

次に、公共施設の建設にあたって、公金ではなく民間資金を獲得しこれだけの成果を上げられた原因、特にふるさと納税のスキームを活用したことも含めて、今一度検証し、今後、公共施設の新築・改修に役立てていただきたいと考えますが、区長の見解を求めます。

併せて、今後の海外向けの寄附金キャンペーンの展開について、改めて具体的に問います。

次に、美術館の評価と改善策について伺います。

当該美術館は、博物館法に定める博物館としては設置しないものの、同法に準ずる施設として運営することが議会答弁から示されています。そこで博物館法に則った運用について、伺います。

博物館法第8条に基づいて示された平成23年12月20日文部科学省告示第165号「博物館の設置及び運営上の望ましい基準」第4条では、博物館は、各年度の事業計画の達成状況その他の運営の状況について、自ら点検及び評価を行うよう努めることとされ、またこれらについては博物館協議会の活用その他の方法により、学校教育又は社会教育の関係者、家庭教育の向上に資する活動を行う者、当該博物館の事業に

関して学識経験のある者、当該博物館の利用者、地域住民その他の者による評価を行うよう努めることとされています。さらに、博物館は、これら点検及び評価の結果に基づき、当該博物館の運営の改善を図るため必要な措置を講ずるよう努めるものとされています。

博物館協議会に類する会議体を設置し、博物館法に準じた運用を行うことは、墨田区全体を盛り上げ、人と人とをつないでいくという当該美術館の趣旨、及び「人つながる墨田区」という本区のプロモーションに叶うものであると考えますが、区長の見解を伺います。

また、こうした評価を改善につなげていく取組みについても伺います。

続いて、来館者の属性把握と提案型マーケティングについて伺います。

自治体の施策に抜けがちなのは、PDCAサイクルのうち、CからAへ移行するための、事業評価の根拠となるデータだと考えます。公金使用に対する自治体の説明責任が強く求められる昨今、公金の使途には合理的理由がより強く必要となっています。区民世論を二分する議論を行ってきた当該美術館についてはなおさらであると考えます。

当該美術館をあえて博物館法上の博物館に位置付けていないのは、社会教育施設であるものの、観光及び産業を振興するための新しい施設であるからであることは、これまでの議会審議を見れば明らかです。そのような観点から、特に重要視しなければならないのは、当該美術館の投資対効果です。

そこで重要になってくることは、開館当初、葛飾北斎に関心をもって来館していただいたお客様が、どのような国や地域の出身で、どのような年齢や性別であり、どのような観光地に立ち寄り、どのような消費行動を行ったかということを的確に把握することです。これを情報として蓄積することにより、ターゲットを絞った、「提案型マーケティング」が実現できることになります。

現状、情報分析及び提案型マーケティングをどのようなスキームで行おうとしているのか、区長の見解を求めます。

ここからは提案ですが、この新しいランドマークを契機に、来たるべき、IoT、Cloud、AI(人口知能)及びBI(ビジネスインテリジェンス)の時代に備えて、こうした情報分析及び提案型マーケティングを、区政に関するあらゆる情報の収集及び分析を行う社会実験と位置付けてはいかがでしょうか。

まず、美術館来館者に例えば区内博物館共通入場券の割引機能や、周辺の観光及び食事情報に特化したアプリケーションのインストールを促し、次に、性別や年齢、興味のあるカテゴリーの入力を行っていただきます。そうすることで、スマートフォン所有者の指向性にあった提案を、オーダーメイドでプランニングし、来館後は、企画展がある場合や、次回来館に結びつく情報をプッシュ型で提供します。

アプリケーションのダウンロードを促すことで観光客にとっては貴重な観光のための参考資料となると同時に、行政にとっては、所有者個人の属性や現在位置といったデータを収集することができ、どういった属性の個人がどの場所に、どれだけの時間滞在したか、移動手段は何かといった情報が、リアルタイムに、また正確に把握することができます。スマートフォンを情報収集の入り口とする根拠は、その所持率の高さです。平成28年総務省情報通信政策研究所が公表した『平成 27年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書』によれば、全世代のスマートフォン所有率は68.7%、特に10代では82%、20代では95.4%、30代では88.4%、40代では84.5%、50代でも51.8%と、高い所有率を誇っています。

同年6月20日付で博報堂DYメディアパートナーズ・メディア環境研究所が発表したデータによると、東京地区に限ればスマートフォン所有率は全世代で71%とされています。この傾向は今後も続き、いずれ国民のほとんどがスマートフォンを所有する時代が近くまで来ています。外国人については、韓国及びシンガポールでは70%超、欧米でも50%超との数字が出ています。

このように、これまで、委託や職員自ら紙ベースや対面でのアンケート調査を行い、データを収集してきた時代から、より精度の高い客観的データが多数収集できる時代が到来したのは、疑いがありません。

こうしたスマートフォンを活用した情報収集の方法は、委託費や人件費の削減にも効果があると思料します。

実際に、幾つかの自治体でこういった取り組みが進められ、神戸市では、独自の観光アプリケーションを開発しています。

MICE主催者と連携し、主催者が発行するアカウントでアプリケーションにログインすれば、空港から神戸市までのアクセスや会場、宿泊施設の交通案内、神戸市近郊の観光情報や割引クーポンなどを利用できる。

MICE主催者には、割引クーポンの利用状況などの情報を提供、データ分析してサービス改善につなげる。 

神戸市は昨年導入したこのアプリケーションを、このような形で今年度インバウンド受け入れ環境の充実策の一環として機能拡充を実現し、多言語対応化しました。

さらに、集約した情報のオープンデータ化を進め、これまでのダウンロード数は国内外から約33,000に及んでいます。

これら新しい手法を用いた情報収集及び分析手法について、検討してみてはどうかと考えますが、区長の見解を求めます。

本区では既に、防災及び子育ての分野で独自のアプリケーションを開発、提供し、区民への情報発信の利便性は上がったと思われますが、こうした情報分析と提案型マーケティングはどのように行い、区政に活かしてきたのでしょうか。現状について伺います。

この社会実験の先には、区政に関するあらゆるデータの基礎資料として位置付けられる「限定アプリケーション」があり、区民の属性に応じ、情報をオーダーメイドで発信することを目指します。

統合型アプリケーションでは、平成24年度総務省補正予算「ICTまちづくり推進事業」に採択された、愛媛県松山市の「スマイル松山」があります。

これは、ウォーキングにより住民が健康で住みやすく、観光客にとって魅力ある街を目指すプロジェクトで、平時は健康ICT,観光ICT、緊急時は減災ICTとして利用できるアプリケーションです。

アプリケーションを通じて千葉市が道路の維持補修に関して市民からの情報を受け付け、対応状況を明示する「ちばレポ」の取組みを導入したり、ごみ収集情報や、今年度予算で始まった「ヘルス&マナーコミュニティ」のポイントも一元管理します。また既存の防災や子育てアプリケーションの機能も統合します。

このようにして、墨田区民であることの価値を上げ、行政が効率的に区民と協働できるプラットフォーームをクラウド上に作り出すのです。

また、神戸市の例にあるように、アプリケーションで収集した情報は、区内・区外の企業や団体に提供します。どんな性別・年齢の区民がどんな行動をとっているのか、企業活動にとっても有益な情報であると確信します。

こうした取り組みについて区長の見解を求めます。

この質問の最後に、将来の最先端技術の導入について伺います。

ものとインターネットがつながるIoTの時代が間もなく到来します。これまでネックだった点を解消する、①年額利用料100円程度の「低価格」、②数年に1回電池を取り替えればよいという「省電力」、③数十キロの単位で電波が届くという「長距離伝送」の3拍子を備えた920mHz帯の供用が来年2月から開始されることになりました。まさにIoT専用回線といってもよいものであり、IoTの活用が爆発的に行われる幕開けになります。

スペインのバルセロナ市では、Microsoft社と提携しビッグデータ分析を行っています。例えば、スマートパーキングメーターという機器があり、これは市内全域をカバーするWi-Fiと接続することで、ユーザーはリアルタイムで各駐車場の駐車状況を確認することができます。こうしてスムーズな停車場所を誘導することができます。

本区では第三種自転車駐車場にIoTを取り入れ、先述の区民アプリケーションと連動させれば、空いている自転車駐車場へ自転車の誘導をすることができます。

IoTのみならず、VR(仮想現実)を活用し観光PRを推進している三重県伊勢市、地域活性化にAIを利用して実証実験を始めた長野県白馬村など、先端技術の活用は、枚挙のいとまがありません。

特に本年8月、岩手、宮城、福島、熊本の被災4県が、「被災県観光振興」を目的として、ポケモンgoと連携し「ルアーモジュール」による集客を図る取り組みが発表されたことは、記憶に新しいところです。

ポケモンgoについては、この夏、錦糸公園がプレイスポットとして全国的に注目され、多くの来訪者でにぎわった実績があります。

その際、遊具を囲うことにより、ゲームに興じる方と、公園で遊ぶ子供たちを分離し、冷静かつスピード感をもって利害調整をされたことは、公共施設利用のルールを遵守した好例として、高く評価したいと思います。

このような、自治体における最先端技術活用の可能性について、現時点で考えられているものがあるのか、それが今年度新たなスタートを切った「墨田区行政情報化推進計画」にどのように活かされるのか、そしてその結果、私たち区民の生活に何がもたらせられるのか、区長の見解を求めます。

第二に、大規模小売店舗の社会的責任について区長に伺います。大規模小売店舗法の廃止により、大規模小売店舗が激しい競争にさらされ、撤退・廃業に追い込まれ、同時に地域の中小小売店舗が打撃を受けた結果、買い物難民が発生してしまうというダブルパンチの痛手が発生しています。撤退・廃業後の消費が確保されないという問題点が指摘され始めました。

そこで、北海道は平成24年、「北海道地域商業の活性化に関する条例」を制定しましました。同条例第35条には「撤退事業者は、当該撤退により失業者の発生及び買物の利便性の低下を招くことのないよう後継店舗の早期の確保に努めるものとする。」と記載しています。また第2項には「撤退事業者は、当該撤退後の施設を閉鎖する場合は、周辺の環境及び景観の悪化をもたらすことがないよう当該施設の適切な管理に努めるものとする。」とあります。

同条例による定義ですと店舗面積6,000平米以上、大規模小売店舗立地法の定義ですと1,000平米以上が対象となりますが、いずれにおいても錦糸町そごうの撤退を経験した本区において、考慮すべき内容と思われます。

こうした考え方に則り、墨田区商店街活性化に関する条例を改正し、大規模店舗に一定の義務を課すべきと考えますが、区長の見解を問います。

(区長答弁)

1 すみだ北斎美術館をプラットフォームとした新たな社会実験について
すみだ北斎美術館の開館を迎えての私の思いについてであるが、この美術館の開館に至るまでは、長い道のりであり、区議会のみなさまをはじめ、これまで関わり、ご支援いただいたすべての皆様に、改めて感謝申し上げたい。今後も、「地域に愛され、成長する美術館」のコンセプトを実現するため、多くの方々に引き続きご支援いただき、北斎を世界に発信することに努めていく思いを強くしたところである。「北斎の帰還」と題した開館記念展は、マスメディアに大きく取り上げられ、開館から一週間が経ち、来館者数は6日間で、12,592人にのぼった。
まずは、順調なスタートを切ったものと認識している。開館記念展の来館者数は、当初見込みの 3 万人を大きく上回ることを期待している。
多くの方々に御寄付いただくことができた要因については、寄付のキャンペーンを展開するに当たり、始めにしっかりと戦略を練ることができたことが大きいと考えている。その戦略の1つ目は、北斎の作品のみならず、北斎の人としての生き方に訴求したということ、2つ目は、美術館の開館に向けた参加意識を醸成することができたこと、3つ目は、「ハコモノ」という従来の観念を払しょくし、美術館の果たす役割や価値について、議会の皆さんのお力も借りて、全庁一丸となって伝えることができたことにあると分析している。
 ふるさと納税の活用にあたっては、すみだ北斎美術館開館のために寄付していただいた方々へ、すみだブランドという本区のものづくりの魅力を返礼できたという点で意義深かったと考えている。これらを踏まえ、公共施設の新築・改修にあたっても、今回活用したガバメント・クラウド・ファウンディングを含め、さまざまな手法を研究しながら、民間資金の積極的な活用を図っていく。
海外向けの寄付キャンペーンの具体的な展開についてであるが、開館に向けて展開したプロモーションでは、海外メディアにも多く取り上げられ、開館式典には各国大使及び関係者が多数出席された。こうした機運を生かしていかなければならないと考えている。寄付を募るには、ただ単に寄付の窓口を設けるのではなく、その機運を醸成していくための具体的なアクションを伴う必要があることを実感している。このため、海外で北斎の魅力を伝える事業展開が図れるよう、現在、企画を調整しているところである。具体的な報告ができるまで、いましばらくお時間をいただきたいと思う。
博物館法の趣旨に準じた運営のための、自己評価等の実施や、協議会の設置については、すみだ北斎美術館に係る指定管理者業務要求水準書で、「利用者をはじめ、ニーズの積極的な把握に努めるとともに、業務や経営資源の効率化なども含めた自己評価を実施すること。また、各年度の事業実績については、自己評価を行うとともに、PDCAサイクルを取り入れ、次年度以降の管理運営に反映させ、業務水準の向上を図ること。」としている。また、募集要項で、「区は、評価の実施にあたっては、有識者等の外部委員を含んだ委員会を設置する場合があります。」としている。指定管理者には、厳格な自己評価を求めていくと同時に、区としては、博物館法の趣旨を踏まえ、博物館協議会に類する会議体の設置を検討していく。その上で、自己評価や会議体の外部評価を参考に、美術館の運営に生かすとともに、美術館が文化施設であるだけではなく、産業観光にもつながる事業展開をしていくことが、「人つながる墨田区」という本区のシティプロモーションを実現することになると考える。
来館者の属性把握と「提案型マーケティング」について、北斎に関心をもって来館いただいたお客様の情報を蓄積し、さらに、集客などの美術館運営に活かすことは大変重要な観点である。指定管理者には、来館者の属性を把握するために、定期的なアンケートの実施・分析を求め、その結果を、美術館の企画やイベントに活かすとともに、区の産業及び観光施策との連携を図っていく。
独自の観光アプリの開発、情報収集及び分析については、ご提案いただいたスマートフォンの活用による情報収集や、ご紹介いただいた神戸市が MICE 主催者と連携した観光アプリの開発事例などを参考にするとともに、北斎美術館を中心に、今後ますます増加するインバウンドへの対応や、この地域ならではの江戸文化を活かした集客や回遊につながる新たなシステムの研究をしていきたいと考える。
防災アプリと子育てアプリは、情報収集や分析を目的としておらず、防災アプリでは、災害時の避難経路や避難施設をはじめ、平常時からさまざまな防災関連情報を発信することを目的とし、区民や帰宅困難者向けに開発し、提供している。本区の公式ホームページやSNS、東京都のホームページともリンクすることにより、本年10月末の時点において1万1千人余りいる登録者の方々には、さまざまな行政情報を併せてお知らせできる仕組となっている。また、子育てアプリについては、平成27年3月から、配信を始め、これまで約3,000人の方にご利用いただいている。お子さんの月齢に応じた子育てに関するアドバイスや区の子育て関連施策の情報を「プッシュ機能」を利用し、提供してきたところである。
松山市や神戸市の事例のような社会実験に対する私の見解であるが、区では、昨年 10 月に協治(ガバナンス)の推進、地域の活性化を目的としてオープンデータの公開を始めた。ご提案の社会実験については、ICT を活用した行政サービスの新たなスキームの構築や、民間企業等による新たなサービスの創出が期待できると思うので、社会状況の変化も見据えながら今後研究していく。
最先端技術の導入についてであるが、区では現在、「第 4 期墨田区行政情報化推進計画」に基づき、電子申請、電子納付の推進や、マイナンバーカードを活用した証明書類のコンビニ交付など、更なる ICT 化を推進しているところである。ご提案のあったIoTの事例にも見られるように、情報通信技術は日々進化し、本計画策定後に開発された技術も数多くあるので、他自治体の先進事例も参考に調査研究し、区民にとって、利便性の高い電子自治体となることを目指す。
 
2 大規模小売店舗の社会的責任について
大規模小売店舗の撤退・廃業により、地域コミュニティへ影響を及ぼしている事例については、私も認識している。現行の「墨田区商店街活性化に関する条例」では、大型店に対して、地域の一員として、当該地域における商業の持続的発展に寄与するよう努力義務を規定しているで、ただちに見直しは考えていないが、今後も、国や都、他都市の動向を注視していきたいと考える。

 

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