定例会代表質問 佐藤篤

p1370479

 

 

 

 

平成28年第四回定例会代表質問 佐藤篤

私は、墨田区議会自由民主党を代表して、①来年度予算編成及び②政策誘導の考え方について区長に、③教育現場における課題について教育長に質問します。
* * *
第一に、「平成29年度予算編成方針」及び「平成29年度予算の見積りについて」に関して伺います。
まず、区長の発出した「平成29年度予算編成方針」について伺います。
平成29年度予算編成は、新しい基本計画を策定してから、初の予算編成となります。この「予算編成方針」に、区長が公約で示した、強い思いが凝縮されていることと拝察します。
基本計画では「“夢”実現プロジェクト」を前期5年間の重点的課題と位置づけており、これらの成果を検証し、後期5年間に、更にこれを推進することとされております。
そこで区長に伺いますが、来年度予算編成において、特に重点的に位置づけたい事業分野とその理由をお示しください。また編成後、前期残り3年間の重点課題についての見通しも、併せてお示しください 。
次に、副区長から発出された「平成29年度予算の見積りについて」に関して、具体的に伺います。
昨年度の同通達とその文章を比較してみたのですが、特徴的だと感じたのは、予算編成に関して「各部長の指揮のもと」との表現が挿入された点でした。予算の見積もりについて、「各部長の指揮」との表現に込めた思い、また現在各部からのヒアリングの最中かと存じますが、この表現により、前年度と比べてどのような変化をもたらしつつあるのか、区長に伺います 。
次に、政策経費について伺います。①昨年度は政策経費に関して「原則として」期限設定することとなっており、例外を認める表現となっていました。しかし、今年度はこの例外がなくなりました。政策経費は、次年度以降標準経費となり、ややもすれば際限なく続いてしますが、これに一定の区切りを設け、PDCAサイクルを意識した事業遂行を行おうとする素晴らしい試みであると考えます。この表現を表すに至った理由と、その目的をお知らせください 。
また新たに、②「8月の政策会議での区長等の指示や意見等を踏まえた内容」とすることが厳命されています。政策会議ではどのような議論がなされ、区長はどういった指示等をされたのでしょうか。お伺いします 。
更に、標準経費について伺います。標準経費について、昨年度は事業の平年度化や対象者の増など、当然増となる経費は標準経費予算額に含めないこととなっていました。しかし、今年度はこの経費を含めて、同予算額の範囲内で収まるよう、努力・工夫することとなっています。これはどういった分野を意識して、所管部にどのような努力・工夫を求めているのでしょうか 。私たちは、需要が増えている教育及び福祉等、人員改善を行うべき部署もある、と考えていることはこれまでも折に触れて述べてきました。こうした見解に区長はどう応えるのでしょうか。区長の見解を求めます 。
続いて、予算編成過程の公表について、区長に伺います。
山本区長となってから、予算編成過程の公表は更に詳細なものとなり、主要な事務事業レベルでの公開となりました。現在は、部別要求ベースで約5,000万円以上の予算を伴うものについて、公開しています。開かれた区政を目指す中で、この取組みを大きく評価しています。きょうは、この取組みを一歩さらに進めてはどうかと、一つ提案します。
区長も、議員時代に参考にされていた板橋区の予算編成過程の公表では、当初要求額と当初予算案額が500万円以上乖離したものについて、その増減理由を明確にしています。この乖離理由が明示されることで、現場では対象者の増減等があり予算要求したが、もう少し効率化が図れるだろうとして予算を絞った、または現場では対象者は変わらないと予想したが、経営的観点から増額したなど、現場の肌感覚と自治体経営の両方の視点がよく分かり、予算審議上非常に有用なデータとなると考えますが、区長の見解を求めます 。
また、9月8日付で発出されている「平成29年度予算編成方針」及び「平成29年度予算の見積りについて」ですが、現在、区民の皆様に向けて公開するのは、部別要求が出そろってからと聞いています。法律上、区長に予算編成権が専属していることは理解しています。しかし、納税者たる区民への説明責任という観点からは、少なくとも区長の方針である「平成29年度予算編成方針」については、議会報告と同時に速やかにこれを公開し、区民に議論を喚起することが必要ではないでしょうか。タウンミーティングをはじめとして、区民とともに協働する墨田区をつくろうとする山本区長においては、ぜひ前向きに考えられたいと思いますが、見解を求めます 。
次に、政策法務の推進について、区長に伺います。
区長のスローガンのひとつに「できない理由から入るのではなく、できるためにはどうするか」というものがあります。区民の皆様にこれを伝えると、概ね共感の得られる、素晴らしい政治姿勢だと考えます。しかし、何から何まで、すべてできるわけではありませんし、すべきでないものもあります。行政活動にはすべて「理由」、換言すれば「根拠」が必要です。民主的コントロールを経た、法規や予算上の位置づけがあり、行政は初めて行動に移すことができますし、むしろそうでなければなりません。つまり、区長がおっしゃっていることは、区長以下、職員自らが、国や都及び本区の法規や予算上の位置付けを調査研究し、政策づくりの戦略的手段と位置付ける、まさに政策法務の考え方であるのだと認識しています。区長にこのスローガンの意味について具体的な内容を伺います 。
区長のスローガンを実現するためには、区長自らその方法を職員の皆様に教示しなければなりません。山本区長が就任してからの行動をみると、特別区長会事務局及び東京都区政課その他の外部機関との積極的な人事交流、大学院への派遣の再開、資格取得支援並びに係長心得による係長研修の受講など、政策法務に資する行動をされてきたと高く評価しています。
区長はこの研修や派遣に際して、職員にどのような技能獲得を期待し、本区施策に生かしていくことを期待しているのか伺います。さらに、今任期中に更に職員の技能向上のために、環境整備を行う予定があればお示しください。
この間、執行部にさまざまな法令の疑義解釈を問うことがありました。すると、①行政活動の根拠を明示できない、②慣例を信じて法令レベルまで確認していない、③国や都が示した解釈をそのまま適用するといった場面が散見されることに気づきました。こうした状況では、区民の皆様に対する説明責任が果たせず、行政不信につながるおそれがあり、何より、自立した自治体経営はできないと考えます。全職員が、いま自分が行っている行為は、どういった根拠に基づき、どういった趣旨で行われなければならないのか。この認識をもつことが必要ではないでしょうか。具体的には、今一度それぞれの所管で抱えている事業の総点検を行い、これらの実施根拠を明確化し、職員間で十分に情報共有する必要があると考えますが、現状の認識と改善策について、区長に伺います 。
* * *
第二に、政策誘導の考え方について、区長に伺います。
まず、保育所における保育と、在宅子育てを支援する保育のあり方について質問します。
墨田区子ども・子育て支援事業計画では、現状の待機児童数から推計して、保育の量の確保について計画を立てています。特に、人口増の影響により、保育対象年齢層の増加が著しいことから、平成28年度及び29年度は墨田区待機児童解消計画を策定し、本年度は認可保育所4園185名等、総じて300名の定員増を予定しています。9月9日、東京都が「待機児童解消に向けた緊急対策」を発表しましたが、この活用を含め、来年度予算編成にあたり、同計画の現時点での進捗状況と達成見込み、また来年度は500名の定員確保を目指していますが、その具体的見通しを区長に伺います 。
待機児童問題の最大の課題は、保育施設の確保ですが、同様に保育士の確保が課題となっていることは、自明であります。各自治体は保育士確保のために東奔西走し、自治体間では、際限なき保育士待遇の改善競争となっています。本区も保育士に対する家賃助成を増額するなどその例外ではありません。
さまざまな数字がありますが、例えば、働く保護者の皆様がご覧になる情報サイト『日経DUAL』では、昨年11月、本区が認可保育所の入所決定率78.2%となり、23区中で1位との評価となっています。家庭の事情でどうしても保育所に入れなければならない「保活」中の保護者にとっては、本区の魅力はとりわけ大きなものとなっていることが分かります。
しかし、逆の側面で言えば、これが保育所入所に関する過度な競争を煽る、という側面を併有しているとも言えます。この「保育所入所に関する市場」を、いかに経済的原理で最適化するかという観点について、今一度考える必要があると思っています。
墨田区子ども・子育て支援事業計画では、今年度改めてニーズ調査を行い、計画の中間年である来年度に計画の見直しを行うこととなっています。そこでこの見直しに際して、先の観点から2点考慮してはどうかということを提案しますので、考えてみていただきたいと思います。
1つ目は、保育所入所指数の公表です。
決算特別委員会資料によれば、品川区及び文京区など特別区で、9区で、保育所入所にあたり直近の一斉入所について「何点で入ることができたか」という指数を公表しています。こうすることで、「保活」を行う保護者は自らの指数を計算した上で、どの保育所を希望すれば最適なのか、また自らの入所可能性はどのくらいあるのかを客観的に把握することができ、区役所窓口での相談業務が減るほか、保護者の「保活」ストレスを軽減することができます。また、一時的な転入者に対しても、この情報開示により、一定程度の抑制効果が期待されます。もちろん、1名のみの入所など、指数を公表することにより、個人情報が明らかになってしまう場合は、文京区のように公開しない措置をとることがあってよいと考えますが、この指数の公表の意義について、区長の認識を伺います 。
2つ目は、在宅子育てを支援する保育への誘導です。
ここで、本区の保育所における保育と在宅子育てを支援する事業にかける公費負担額を比較してみます。本区の認可保育所にかかるコストは、平成27年度決算で区費負担額約80億円、児童1人あたりの区費投入額は約170万円となります。その他、認証保育所や小規模保育所や家庭的保育者への区費負担もあります。
他方で、同決算で、在宅子育てを支援する一時預かり事業や子育てひろば事業の決算額は約14億円であり、緊急的な利用である子どもショートステイ事業を除くと、児童1人あたりの区費負担額は、約2,000円から最大約8万円という状況となっています。このほか在宅での子育てに関しては、児童館を利用しているものと思われます。新しい保育所が建設される一方、在宅で子育てをしている皆様は、プレハブの子育てひろばと昔ながらの児童館で子育てをしなければならない現状があります。
前回定例会の本会議答弁で、区長は「愛着形成期の子育てを大切にしていただきたい」と述べておられますが、施設保育と在宅子育てでは、その公費投入額は約20倍以上の差となっています。同じ子育てをするのに公費投入の不公平感が生じているとの保護者の声も出ていますが、これに区長はどう答えるのでしょうか 。
もちろん、保育所は、児童福祉法に則り、保育の必要性がある子どもたちを自治体の責任で入所させる施設であり、自治体の責任で整備しなければならないことは言うまでもありません。ここで問題にしたいのは、育休を取得したり、パートタイム労働で在宅子育てをしようとする保護者を支援する保育にかける予算が、極めて少ないということです。こうした部分に予算をかけ、政策的に誘導していくことが、際限なき保育所建設に一定程度の目途をつけ、自治体間の保育所建設競争から脱出する道であると考えます。
来年の墨田区子ども・子育て支援事業計画見直しに向けて、抜本的な対応をとるべきだと考えますが、区長の見解を求めます 。
今年7月24日の毎日新聞でも、待機児童対策はいたちごっこの側面があると指摘しています。同新聞が全国156市区町村を対象に調査を行った結果によれば、例えば、荒川区は「企業への義務づけなど育児休業制度の抜本的な改革と、その間の手厚い所得保障」を求め、中央区は「育休給付金を3歳になる年の3月まで給付すれば、0〜2歳に集中している保育ニーズを分散できる」などと回答しています。また、岡山県倉敷市は、保育所に預けず公的サービスを受けていない人への配慮として、家庭で保育している3歳までの子どもへの児童手当増額を求めています。まさに、自治体として行うべきは、保育所建設への対応だけではなく、企業や国に対して「働き方改革」を求め、そのための制度設計を求めるべき局面にあると考えます。
平成26年、埼玉県北本市では、育休中の保護者に、賃金から、雇用保険における育児休業給付金で支払われる額を除いた金額を市独自に支給し、賃金の保障を行うことで育休取得を推進する政策を全国で初めて提言しました。残念ながら実現には至りませんでしたが、方向性としては共感するものがあります。
どこの自治体も同じような「金太郎飴」的な政策をやめ、例えば、在宅子育てを誘導するような、児童手当の上乗せや家賃補助、子育てバウチャーの配付など「墨田区独自」の保育政策こそ、区長のいう選択される自治体に必要なことではないでしょうか。区長に見解を求めます 。
次に、施設介護と在宅介護のあり方について質問します。
先ほどの質問と同様に区費負担額について両者を比較すると、介護老人福祉施設等施設介護の区費負担額は約7.5億円で、利用者1人あたりの区費投入額は年額約360万円となります。他方で訪問介護等在宅介護をみると、区費投入額は約16億円となり、利用者1人あたりの区費投入額は年額約42万円となり、約8倍の開きがあります。施設に入ることで本人の身体的負担はもとより、財政負担も大きくなることが分かります。
第 6 期介護保険事業計画では、これまでの実績から介護保険の給付見込み数を出していますが、こうした状況の中で、次期計画の策定にあたっては、介護予防及び在宅介護に更に重点を置き、施設介護に至らないように誘導する施策の充実こそが求められると考えます。次期計画の策定年である次年度に向けて、どういった点を重視していくのか、その方向性を問います 。
この質問の最後に、生活困窮者支援と被保護者支援のあり方について、区長に質問します。
平成27年度決算において調査したところ、本区で生活保護受給者への公費負担総額は、約162億円で、区費負担額を4分の1として算出し、一部都負担のものを除くと、約35億円となります。他方で、生活困窮者に対する支援事業は、就学援助を含めると、総額で区費負担額約4億円となります。区費負担額で実に9倍の開きがあることになります。生活保護を受けることは国民の権利ですが、いかに生活保護に至らないように、家計の改善や支援を行い、寄り添い支え、自立を促していくことは、生活困窮者自立支援法の趣旨であると同時に、自治体の責務であり、財政負担の軽減の観点からも重要な施策であることはこれまでも一貫して訴えてきました。
滋賀県野洲市では、今年、全国で初めてとなる生活困窮者支援内容を含む「野洲市くらし支えあい条例」を制定しました。同条例では第2条で「生活困窮者等」を経済的困窮、地域社会からの孤立その他の生活上の諸課題を抱える市民と定義し、第23条で、市が、その組織及び機能の全てを挙げて、生活困窮者等の発見に努めることを定めています。また第25条では、専門職により構成される支援調整会議を位置づけ、専門的知見の活用による一元的な課題解決を目指しています。
生活困窮者自立支援法では、自立相談支援事業、住宅確保給付金の支給、生活困窮世帯の子どもの学習支援等が柱となっていますが、同法での支援メニューは一面的で断片的に過ぎません。区民に降りかかるあらゆる課題を解決するためには、総合的で一元的な施策を行うことが重要です。
本区においては、庁内連携を十分に図っているとは思いますが、私も同行した相談では、生活困窮者自立支援法に基づく支援は区、応急的な貸付けは社会福祉協議会、債務整理など法的問題は法律事務所と、何か所も往復しなくてはならず、ただでさえ生活困窮に至っている方にとっては大いなる負担になっています。
今一度、①専門的知見の活用を含む目の前の「人」に着目した一元的な支援の確立と、②区独自の生活困窮者支援メニューの充実を求めますが、区長の見解を求めます。
* * *
第三に教育現場における課題について、3点、教育長に伺います。
まず、学校と地域をつなぐ施策について、伺います。
今月14日に行われた総合教育会議シンポジウムを傍聴しました。議会として求めてきた総合教育会議条例が提出・可決され、これに基づいた、区民に開かれた画期的な総合教育会議であったと評価します。山本区長及び加藤教育長の教育にかける強い思いが改めて伝わってきました。そこでパネリストの皆様から表明された内容をヒントに、教育長に質問します。
シンポジウムでは竪川中学校の取組みが紹介され、議論が盛り上がりました。特に、3年生向けの高校受験に際しての面接練習会を実施したところ、面接者役として、約40名の企業及び地域の協力者が現れたとのことでした。こうした取組みを通じて、地域には学校に協力したい方が多く、しかし何をしたらよいのかが分からないため、協力体制までにつながらないのだと気付いたそうです。
平成18年に改正された教育基本法第13条には、学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力が規定され、これらはそれぞれ役割と責任を自覚するとともに、相互の連携及び協力の努力義務が規定されました。これより、加速度的に、学校と地域、家庭の協働が進んでいきました。
これに基づき文部科学省は予算をつけ、学校支援地域本部事業を推進しています。本区においてはすみだ教育研究所の事業としての学校支援ネットワーク事業が位置付けられています。NPO法人に委託し、各種専門家団体及び企業と各学校をつなぎ、授業への講師派遣などを行っており、たいへん素晴らしい成果を上げています。
しかし、文部科学省が目指した本来の意味での、各学校単位で学校と地域をつないでいく取組みという観点ではまだまだ改善の余地があると考えています。
現状、各学校にはPTAや青少年育成委員会、学校運営連絡協議会、青少年委員といったプラットフォームがすでに存在していますが、関係者に伺うと、具体的な協議が行われている事例は少ないようですし、学校によってその取り組みには大きな温度差があり、そのことが先のシンポジウムでは指摘されたのだと考えます。
そこで、既存の仕組みを用いながら「学校と地域をつなぐ」役割を明確化し、次なる展開を検討してはいかがでしょうか。教育長の見解を求めます。
さらに教育長はシンポジウムで「学校が地域に求めるだけではなく、学校が地域に何ができるかを考えたい」と発言されていましたが、具体的に今後どのようなことを考えておられるのでしょうか。
次に、学校選択制について伺います。来年4月から、小学校の選択が、隣接学区域のみとなります。昨年の決定以降、この間、どうして選択幅が狭まるのかという保護者の皆様からの不満のお声が既に私たちの耳に入っています。教育委員会は、防災の観点からとの理由を一貫して述べられますが、その目的には理解をするものの、なぜ隣接区に限るのか、その理由は今なお不明確です。防災面を強調するならば、学校と自宅との絶対的距離で考えるべきですし、震災時の引き受けを考えると、夫婦共働き家庭にとっては、必ずしも自宅との距離が近いからといって安心というわけにはいかないからです。
平成25年、教育委員会は学校選択制度に関するアンケート調査を行っていますが、来年度以降、一定の時期に、改めてその効果の検証を行うため、保護者や地域関係者のアンケートを実施すべきだと考えますが、教育長の見解を求めます 。
最後に、学校図書館図書標準について伺います。
この10月、文部科学省が「学校図書館の現状に関する調査」を公表しました。この調査の中で触れられている学校図書館図書標準は、公立義務教育諸学校の学校図書館に整備すべき蔵書の標準として、当時の文部省が平成5年3月に定めたものであり、学級数に応じて設定されています。これによると、本区の区立小学校については、25校中5校が未達で達成率80%、公立中学校については、10校中9校が未達で達成率はわずか10%、23区で最下位という結果となっています。
学力向上や子どもの居場所づくりの一環として、学校図書館はきわめて有効な場所です。学校司書が配置されても、学校図書館の蔵書が充実していなければ、その意を達成することはできません。現状についての認識を教育長に伺います。また特に中学校の達成率が著しく低い点の原因は、どう分析されていますでしょうか 。
事前にヒアリングするところによれば、学校図書館の図書の購入は、学校長の決裁であり、各学校横断的な、区教育委員会としての学校図書の蔵書の充実に関する目標や計画の不存在が原因と聞いています。そこで、教育委員会として文部科学省が定めた図書標準に基づいてしっかりと計画を立て、蔵書の充実を図り、達成率100%を目指すべきだと考えますが、その計画目標も含め、教育長の見解を求めます。
また、同調査では、学校図書館に新聞を配備している学校は、小学校が41.1%、中学校が37.7%と、いずれも前回の調査より増えており、情報活用能力などの育成のため、新聞を配備する学校が全国的に増えていると推察されます。本区における状況は学校においてさまざまと伺っていますが、今後の方向性について質問します。
以上で質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。

区長答弁)
1 平成 29 年度予算編成について ⑴ 「平成 29 年度予算編成方針」及び「平成 29 年度予算の見積り」について
平成 29 年度予算は、「“すみだの夢”実現に向けた着実な事業推進により、新たなステージを切り拓く予算」と位置付けて編成を進めている。来年度は、「子ども・子育て支援の切れ目ない推進」「新すみだプランの推進による学力向上」「新住宅マスタープランの推進による子育て世帯が住み続けられる住環境整備」「不燃化・耐震化による安全安心なまちづくり」など、重点課題に対応する事業を最優先に、“すみだの夢”実現に向けて、積極的に取り組んでいきたいと考えている。平成 30 年度以降3年間の重点課題について、基本的な考え方は 29 年度と変わらないが、今後、基本計画に基づいて分野別の計画を策定する際には、計画の重要事業を加えるほか、国や都の新たな制度や区民ニーズを適切に捉え、その時々の情勢の変化にも対応した施策を実施していきたいと考えている。平成 29 年度予算の見積りにおいて、「各部長の指揮のもと」との表現に込めた思いや、どのような変化をもたらしているかについては、新基本計画策定後に初めて編成する予算となるため、「すみだの夢」の目標達成に向け、計画に掲げる各施策を着実に推進する第一線での責任者として、部長級職員に手腕を発揮してもらいたいと考えている。その意味では、部長会や政策会議で、各部の経営資源をマネジメントする経営者としての自覚と向上心を持って活発な議論が行われていると感じている。政策経費のうち、新規事業に終了期限を設定することについては、PDCAサイクルを徹底することで、事業の効果を見極め、選択と集中の判断のもと効果的・効率的な行政運営を心掛けていく考えである。8月の政策会議では、予算編成方針の策定に先駆けて、施策の方向性や主要課題等に関して、部課長の考え方を聞き、意見交換を行った。具体的には、子ども・子育て支援施策、新住宅マスタープラン、耐震化促進事業などの主要課題について、それぞれ取組みの方向性を確認するとともに、予算編成に向けた課題整理の視点を示した。標準経費にどのような工夫を求めているかについては、前年度に政策決定した新規事業が今年度標準経費に計上され、通年化することにより、標準経費は年々増加していくため、事務事業を絶えず見直し、改善等を行い、新しい施策を行う基盤づくりが必要になる。このような考え方から、各部長に、自分の所管する既存事業を徹底的に見直し、効率的に執行する体制を整えるよう、経営者としてのマネジメントを確立するように求めている。人員増が必要な部署に対する対応では、東京2020オリンピック・パラリンピック大会や児童相談所の移管の準備など新たな行政需要や、早急に解決しなければならない課題に対応するためには、担当する部署の人員を増やすことが必要となる。このため、限られた人員の中にあっても、確実な事務執行に努め、区民ニーズに的確に応えられるよう、適正な職員配置を行っていく考えである。
 
⑵ 予算編成過程の公表について
予算編成過程の公表については、一般会計の事務事業の数が、標準経費と政策経費を合わせて約1400あり、全てについて公表することが困難なため、28年度予算の公表から予算要求ベースで5千万円以上の主な事業を選定したところである。経費の増減理由を明確にすることも、予算編成過程の透明化のひとつになりうると考えているので、現状を検証した上、総合的に勘案し、予算審議に資するものとなるよう工夫していきたいと考えている。予算編成方針は、予算事務規則に基づいて区長が定めるものであり、職員に対する予算編成に関する基本方針であるとともに、区民に対しては、翌年度の区政運営に対する基本的な考え方を示すものである。編成方針を早期に公表することは、意義のあることと考えているが、これまでの経緯も踏まえ、議会に示した後に、区民の皆さまにも早期に公表したいと考えている。
 
⑶ 政策法務の推進について  
私のスローガンである「できない理由ではなく、できる理由を考えよう」について、私の基本姿勢の中に、民間感覚と区民目線を取り入れた区政運営がある。そこで、職員が柔軟な発想を持ち、「前例踏襲」「事なかれ主義」ではなく、前向きに「どうすれば実現できるか」という視点で取り組むことが必要と考えている。しかし、法的に根拠のないもの、自治体の役割を超えるものなど、適切ではないものについてまで、できる理由をさがすということではない。政策を実現するために、そこに携わるすべての職員が関連する法規や予算の位置づけ等を認識し、区民の皆さんに説明責任を果たしていく。そして、条例制定や法規の解釈運用を通して、よりよい政策を実現していく、そうした視点をもって仕事にあたることを職員に求めたものである。他の団体等への派遣については、異なった組織文化や業務の進め方などを経験することにより、新たな視点と発想で考える力が養われ、それを本区の区民サービスの向上や業務の見直しに生かすとともに、そこで培ったネットワークを今後の業務に活用することを期待している。また、今年度から実施している資格取得支援や係長心得に対する政策課題研修なども、新たな動機づけやスキルアップにつながると考えている。さらに、技術職の人事交流の場を広げるとともに、多くの職員にこうした機会が得られるよう取り組んでいくことで、スローガンの達成につなげていく。また、慣例や都などの解釈をそのまま適用している事例などがあるとの指摘について、当然のことながら、法令などに基づいて、仕事を進めることは職員としての基本である。そこで、日々の指導や研修等を通して、個々の職員に、法令と実務を結びつける姿勢と論理的な思考法を身に付けさせ、区民目線の政策提案ができる人材を育成していく。
 
2 政策誘導の考え方について ⑴ 保育所における保育と在宅保育のあり方について
東京都の「待機児童解消に向けた緊急対策」の活用を含めた、待機児童解消計画の進捗状況及び達成見込みについては、平成28年度に300人、平成29年度に500人の保育定員拡大を目標として、認可保育所等の整備を進めている。現時点では、28年度中の定員拡大は、約270人でおよそ9割の達成となる。一方、29年度については、これまでに認可保育所整備事業者から約470人分の提案があり、この他にも、複数の事前相談を受けている。東京都の「待機児童解消に向けた緊急対策」も積極的に活用しながら、これらの確実な事業化を支援するとともに、公有地の活用などを進めることで、2か年で800人の目標を達成できると見込んでいる。保育所入所内定者の指数の公表について、本区の子ども・子育て会議の議論では、指数が同点となった場合に優先順位で決定していることから、最低指数を公表することによる混乱等の懸念や、入所者のプライバシーの確保等の観点から、公表には相応しくないといった様々な意見が出されたため、結論に至っていない。現在のところ、内定者の最低指数を公表している区が9区あるが、優先順位の詳細の公表まで行っている区は限られている。平成29年度の入所に向けては、現時点では、保育施設の入所受付を目前に控え、対応は困難なため、現行を維持することとするが、今後、子ども・子育て会議での議論も重ねながら、課題を整理し、公表に向け検討していく。保育所における保育と在宅子育ての支援にかける公費投入の不公平感が生じていること、また、このことに対して、「墨田区子ども・子育て支援事業計画」の見直しに向けて、抜本的な対応をとるべきとの指摘について、保育所にニーズが集中する状況の中で、個々の世帯に応じた保育サービスを提供するためには、在宅子育て支援の一層の充実を図る必要があると認識している。11月22日に東京都で開催された「待機児童解消に向けた緊急対策会議」においても、都区が連携した取り組みの強化を、直接、都知事に求めた。これまで本区では、待機児童問題の解消に向けて「待機児童解消計画」を策定するなど、保育所における保育の充実に力を入れる一方で、在宅子育て支援についても「子育てひろば」の運営や一時保育の実施などに取り組んできており、今後児童館を中心とした子ども版地域包括センターを展開することによって、在宅の子育て支援を充実させていく。「墨田区子ども・子育て支援事業計画」の見直しに当たっては、「タウンミーティング」での子育て世代の方々のご意見や、「ニーズ調査」の結果をもとに「墨田区子ども・子育て会議」の議論を踏まえ、個々の世帯の子育てニーズに対応した支援を展開できる計画としていく。「墨田区独自」の保育政策について、本区ならではの子育てメニューの充実を図ることによって、保護者の様々なニーズに適切に応えることができると認識している。本年度から、両子育てひろばで保護者同士がお互いの子どもを預かり合う「なかま保育」を実施するなど、子育て世代が地域でつながりを持てる在宅子育て支援の充実にも力を入れている。新たな区独自の金銭給付については、財政負担を考慮しつつ研究していく必要がある。「墨田区独自」の政策については、区民ニーズや、地域資源などの本区の特性を踏まえ、さまざまな面から検討し、どこよりも魅力的で選択される自治体を目指していく。
 
⑵ 施設介護と在宅介護のあり方について施設介護と在宅介護の利用者一人あたりの区費投入額に大きな開きがある中で、次期計画の重視する点として、まず、今後の高齢者人口の動向を踏まえ、いわゆる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる平成37年、2025年を見据え、地域包括ケアシステム構築に向けた居宅介護サービス等の充実を図り、在宅での高齢者の生活を支えていく。次に、介護保険制度を持続可能な制度とするため、介護予防・日常生活支援総合事業を充実させ、高齢者が地域や社会の中で役割を持ちながら、いきいきとした生活を継続することを目指す。さらに、介護人材の確保に向けた取組や、質の向上に向けた研修等についての施策を充実させるとともに、要介護者の在宅生活の継続や介護者の就労支援に有効な介護サービスを構築し、介護の担い手を育成・支援していく。
 
⑶ 被保護者支援と生活困窮者支援のあり方について
「人」に着目した支援を行う上で、窓口のワンストップによる行政サービスの提供は、大変重要であり、とりわけ福祉サービスの現場においては、一段の配慮が必要であると認識している。現在、区で行う生活困窮者の相談事業や、区民法律相談事業、或いは、墨田区社会福祉協議会で実施する貸付事業が、今後さらに連携することにより区民サービスの向上につなげるよう検討する。生活困窮者支援メニューについては、平成29年度から、生活困窮者自立支援法の見直しが予定されているため、その動向を注視し、この間の事業実績をもとに生活困窮者支援対策の充実を図っていく。
 
 
(教育長答弁)3 教育現場における課題について ⑴ 学校と地域をつなぐ施策について
本区では、学校を支援する事業が区内すべての小中学校に有効に活用されるよう、「学校支援地域本部」を各学校の管理下に置く形態ではなく、教育委員会事務局内に「学校支援ネットワーク本部」を設置し、各小中学校に「出前授業メニュー」を提供するなど、学校と地域社会との相互連携の橋渡しを行っている。一方で、学校と地域をつなぎ、学校を支援する取組としては、青少年委員や青少年育成委員会などの制度が存在するほか、各学校において独自の取組が行われている。これらの既存の取組を円滑に進め、さらに学校と地域の連携を強めていくためには、各学校単位で学校と地域をつなぐ役割を明確化し、連絡調整やコーディネート機能などを充実させていくことが重要であると考えている。今後、現在の「学校支援ネットワーク本部」の活用も含め、学校と地域をつなぐ仕組みについて検討していく。また、これからの公立学校は、地域の人々と目標やビジョンを共有し、地域と一体となって子どもたちを育む「地域とともにある学校」へと転換していく必要がある。地域が学校を「支援」するだけではなく、地域と学校が「協働」するという考え方に基づき、地域清掃や地域行事への参加などの地域貢献活動や、防災の観点からの取組を進めていく。
 
⑵ 学校選択制について
来年の 4 月から小学校における学校選択については、児童の安全・安心の確保の観点から、隣接する学区までの選択とする見直しを行ったところである。児童の通学時の被災防止や保護者の緊急時対応等に配慮するとともに、遠方への通学による低学年児童への負担や事故リスクの減少が期待できる。実態としては、学校選択制度を利用している小学生のうち、9 割近くが隣接学区を選択しており、他区における制度の見直しにおいても隣接学区までとしている区が多い状況にある。学校選択制度の検証については、概ね5年ごとに実施しており、必要性は高いと認識している。今後、保護者や地域関係者を対象にアンケート調査を実施し、制度運用の検証と改善に努めていく。
 
⑶ 学校図書館図書標準について
文部科学省の「学校図書館の現状に関する調査」の結果、小・中学校における学校図書館図書標準の達成率が低い学校があり、特に中学校の達成率が低いことについて、課題があると認識している。その原因として、蔵書の購入は、各学校の判断で実施していることや、蔵書数の数値目標に対する認識が薄かったため、学校ごとの取組に差が生じていると分析している。学校図書館の蔵書の充実は、学力向上や子どもの居場所づくりの一環として、有効なものであり、より充実させていく必要があると考えている。今後は、教育委員会として数年間で学校図書館図書標準を満たすことを目標に、計画を立てて、学校ごとの達成率を管理し、蔵書数の増加を図っていく。学校図書館における新聞の配備状況について、現在、小・中学校においては、写真・給食・保健等の壁新聞や一般紙を購入して、学校内に掲示して児童・生徒の閲覧に供している。情報活用能力の育成の観点からも、教育活動における新聞の活用は重要であると認識しており、学校図書館への新聞の配備については、利用率向上も含めて、校長会等を通じて協力して進めていく。

«  | ブログトップ |  »

                                             

上へ戻る

すみだ北斎美術館